考えたこと2

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臨床心理士の栄枯盛衰 2
前回はぼくがキャリアの仕事を始めた、2007年までの経緯を書いた。
その続き。

2007年には、臨床心理士の数は1万8千人になっていた。ちなみに現在は3万5千人にも膨れ上がっている。
ぼくはその年からキャリア支援の仕事をし始めた。
そこでは「私のお仕事シリーズ」というようなものを、当時のスタッフがやっていた。
ある業界の関係者を呼んで、仕事をする上で大事なことややりがいなどを話してもらうという企画だ。
「おお、これはいい」と思ったのを覚えている。

実はこの頃、心理系の入学者の半数以上が、入学時点で「将来は臨床心理士になりたい」とアンケートに答えていた。
だから、「私のお仕事シリーズ」では、必ずスクールカウンセラーの関係者を入れていた。
実質的に、スクールカウンセラーしか、臨床心理士の仕事がなかったというのが世の中の状況。
文科省の認定資格だから、文科省のやっている事業で食わそう、ということだ。

ところが、そのスクールカウンセラーがあまり評判がよくない、という。
事情が全くわからなかったので、回りに聞いたりして調べると、なるほど評判がよくない。
中には上手にやっている人もいるのだが、学校側の思惑とカウンセラー側の思惑が違っていたということだ。

学校としては、相談に来た学生のことを先生に伝えてもらいたい、という。
それは当然だろうと思う。
しかし、カウンセラーには守秘義務があり、生徒の相談を職員室で話すなどということはご法度だ、という。
だから、学校にとっては、「カウンセラーが来ているらしいが、ずっと部屋にこもって何をしているのか」というような文句が出ていた。

そういえば、当時ぼくの勤めていた大学でも、学生相談室のカウンセラーが学生の情報を学生課に全く伝えないということで、学生課長が怒っていたのを思い出す。
学校として、連携して問題を抱える学生に接していかないといけないのに…、ということだった。
それが組織のあり方であり、それができるようにカウンセリングをしないと、意味がない。
まことにもっともな指摘だと思う。

そういう学校側の不満が出始めていたのが2007年だったと思う。

臨床心理士になりたい、という人には2種類ある。
まず、学校で臨床心理士に世話になって(個別に相談していたということ)、自分もそういう仕事がしたい、という人。
そして、そうでない人。
そういう分け方をしたとき、当時でも感触では半分以上が何かあって、学校時代に臨床心理士に相談していた人だった。
どちらかというと内省的で、まじめな人。

こういう人たちに、大学院でカウンセラーの基本を教える。
もちろん、カウンセラーの倫理として、守秘義務というのは絶対のものだという。
だから、職員室でクライアントのことを話す人などいない、と聞いた。

ぼくが見たところ、臨床心理の先生に外交的、社交的な人はいなかった。
あまり人との外交的なコミュニケーションが上手くない人が、カウンセラーVSクライアントという1対1の世界に魅力を感じるのかなと思ったりした。

そんなわけで、「職員室に居場所を作れるスクールカウンセラーが、いいカウンセラー」というような「お仕事研究」をやっていた。
そういう人が現実には求められているし、スクールカウンセラーのあり方に問題意識を持って仕事をしている人もいたからだ。

あるいは、児童福祉施設長で、子供との触れ合いややりがいを話してくれる人などが人気があった。
だいたい、臨床心理士を目指している人は聞きに来てくれるから、だいたいこの企画の日は結構な人数が集まった。

でも、今に至っても、勤め先の学校での評判は悪いと聞く。
大学によって差があるのかとも思ったが、そうでもないらしい。
面と向かって文科省のアンケートに文句を書いている学校はないが、仕事としては週に1日、2日程度がよい、というアンケート結果。
評判がよければ、もっと来てほしいというだろう。
殆どが非常勤の仕事で、掛け持ちしないと苦しい。
大学院を出て取る資格の割には、シンドい仕事だ。

臨床心理士の時給は、文科省がスクールカウンセラー事業をやり始めた当初は平均5000円台だったが、今は3000円程度まで下がっている。

2008年くらいに、ハローワークから電話がかかってきて、大学院生が臨床心理士の求人を探しに来たが、向こうでは臨床心理士は専門職だと認識していて、そういう求人はない、と言われた。
もちろん、ぼくもそれは大学院で紹介するので、と言っておいた。

でも、2014年にはハローワークの普通の求人で、臨床心理士のアルバイト、時給1400円というのを発見して、時代は変わったなあ、と思った。

今でもネットで検索すると、時給1500円程度のアルバイトはたくさん出てくる。
需要のわりに、増えすぎたのだろう。
文字通り、心理バブルの結果だ。

というところで、今日はここまで。
次回はスクールソーシャルワーカーのことを。


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