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2016.09.26 Monday
入試改革
以前の日経の大学関係の記事で、私立大学連盟の会長が、もっと私学にも補助金をという意見を書いていた。
いつもこの手の話になったら出てくる、OECDの「学生一人当たりの公財政支出」で日本は最低水準、というグラフが載っていた。 しかし、今回はそこに国立大学と私立大学の学生一人当たりの支出額のグラフが出ている。 それを見ると、国立大学の学生にはOECDトップクラスの支出があった、ということだ。 ということは、2割の国立大に支出が偏り、8割の私立大にはもっともっと支援が必要、ということを言っている。 この会長が言う、私立大学のほうが圧倒的に学生数が多く、人数的に日本を支えているというのはわかる。 しかし、私学のやっている入試が日本の教育を歪めてきたのも事実。 50代以上の世代はわからないかもしれないが、今の文系私立大学の入試は英語と国語と社会(いずれか1科目)だけやっていればクリアできる。 下手をすると、英語と1科目でもOKの大学も多い。 3科目でクリアできないところはごくごく一部の難関大のみだ。 さらに、今の高校生の約半分は、古い世代が考えているところの入試を受けない。 推薦やAOという道で大学に入るのだ。 短期大学などはほとんど全部が推薦で入学者を集めている。 大学では半分まで、と決まっている推薦入学の基準がないためだ。 文科省の平成26年度の学校基本調査によると、大学生の総数が252万人、うち私学に行っている学生が198万人。 そのうち文系学部に行っている人が143万人くらいだから、大学生全体でいうと、57%の学生が私立文系と言える。 でも、実際に私立大学の場合は一般入試が半分程度で、あとは推薦、AOだから注意が必要だ。 下位校になればなるほど一般入試で入る人は少ない。 推薦、AOというのはどんなものか、というのはこのページを見てみてほしい。 50代以上の人たちが考える「推薦入試」というのは、成績が良く、家庭の収入が低い、昔でいう「優秀な苦学生を支援する」というようなものだろう。 残念ながら、今の推薦入試は違う。 大学数が増えるのと同時に推薦入試の概念が拡張され、今や自己推薦も可という学校もある。 文科省の指導で、推薦入試は定員の半分まで受験生を取ることが出来る。 このページに推薦・AOの問題点などが書いてある。 多くは学力や態度に関するものだ。 推薦やAOで入ったら授業についていけない、という感じのものが多い。 それもあるだろうが、ぼくは思春期の高校生が先生に文句が言えないということがあると思う。 指定校推薦でも、公募推薦でも、評定平均値が何点以上という枠になる。 いいところに推薦されるためには、評定平均値を上げないといけない。 当然、試験の成績、普段の提出物、課外活動などが評価される。 早く済ませて楽になりたいという生徒の意識と、楽に指導したいという先生の思惑がここで一致する。 推薦で入ろうと思うと、先生の機嫌を損ねてはダメだ。 どうしても「推薦」という行為に恣意的な部分があるからだ。 先生の顔色を見る生徒が増えているということが、大学卒業後指示待ち体質の若者が増えたなどと言われることにつながっているのではないか。 高校の先生は楽になったと思うが、人格形成上いいことだとは思えない。 イエスマンを育てている事の不具合はあまり取り沙汰されないが、その問題はきっとあると思う。 今やかなり成績の悪い生徒でもどこかの推薦を受けることができる。 それだけ全入化が進んだということだ。 その場合、もちろん専願になる。 下位の大学はそうしてでも枠を埋めたいのだ。 だから、昔のように「推薦入試は成績のいい人が受けるもの」というのは、今は違うということだ。 AO入試は何度か書いたが、やりようによっては一番まともな入試だと思う。 どういう定義かというと、「出願者自身の人物像を学校側の求める学生像(アドミッション・ポリシー)と照らし合わせて合否を決める入試方法である。」というもの。 学力だけでなく、こういう活動をしている人とか、こういう志を持っているとかいうところで入学を決めるということ。 そのために、学生像確認のための面接を行うのが特徴。 でも、下位の大学ではあまり機能していない。 さらに、AO入試は一般入試の扱いになるので、推薦入試だけでは定員の半分までしか取れない学生を、一般入試の前に半分を超えて志願者を取ることができる。 本来なら、AO入試は各大学の腕の見せ所、という感じになる。 国立大がやっている一芸入試なども、これに近い。 ところが、ちゃんとアドミッション・オフィスを置いて、いい学生を取るために一年中高校を走り回り、頑張っている学校はほとんどないだろう。 今の日本のAO入試は、一般入試を受けたくない志願者の抜け道になっているという感じだ。 それが証拠に、AO入試で入った学生の退学率が高かったりする。 求める学生像に合致するなら、退学などしないはずだ。 文科省は大学入試改革をやっているが、そんなことをやらなくても、推薦入試とAO入試を合計して定員の20%以下にしないと補助金をカットする、というだけでも大きな変革になる。 来年度からでもやると言えばいいのだ。 そんなことは大学関係者ならわかっているはず。 経営の問題など関係なく、入試改革というならそうすべきだ。 そして一般入試の回数を減らし、科目を増やして、記述式の試験を実施する。 それをやってから、私学の助成を増やせばいい。 それこそ真の入試改革だ。 |
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