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2016.03.22 Tuesday
リフレッシュコーナー
リフレッシュコーナーという言葉、ぼくはとても懐かしい。
会社の言葉だから、普通の人には意味も想像の範囲だろうと思う。 要は喫煙コーナーのことだ。 そのころはまだ禁煙が事務所の中だけで、屋内の一角でタバコが吸えた。 偶数階だったか、エレベーターホールの横がリフレッシュコーナーだった。 偶数階のリフレッシュコーナーは事実上喫煙者のたまり場となり、煙害やタバコの臭いで吸わない人は寄り付かなくなった。 当時ぼくは設計の仕事をやっていて、けっこうストレスフルだったから、タバコは一日2箱くらい吸っていた。 スーパーライトという種類のタール1ミリグラムというやつだったが、一日何回もトレーに出先の事務所から仕事のFAXが束になって置かれ、そのたびに書類を見て誰にふるかを決め、メモ書きで指示を書いて回し、自分が担当する分を貯める。 そんなことをやっていて、夕方5時になる。 そこからようやく自分のやるべき仕事をやる、という日々だった。 バブルの頃だったから、とにかく忙しかった。 人生で一番働いた時期だったと思う。 30代の頃だった。 しんどかったが、やりたいことができた時期でもあった。 それをやろうと思うと、夜中の時間まで残らないといけなかったが…。 毎日深夜に自腹でタクシーか社用車で帰る日々だった。 その時は喫煙者も多かったし、リフレッシュコーナーはいろんな部署から人が集まってくる場所だった。 普段なら顔を合わせて話さないような人がいたりする。 そういう人とタバコを吸いながら話をすることで、アイデアがもらえたりする。 タバコでリフレッシュするというよりも、そういう人と他愛もない話をしてリフレッシュする、という場所だった。 非喫煙者から見ると、こいつら仕事もせんと何やっとんねん、という場所だったと思う。 いろいろ不満もあっただろう。 それは今となっては、ごめんなさい、というしかない。 しかし、リフレッシュコーナーの機能は高かったと思う。 普段関係のない人と直接話をすることで、組織のパフォーマンスが上がる、という効果は立証されているはず。 それをやることによって、情報が流通したり、誰が何を知っているかが分かったりする。 これはメールやfax、電話では得られない。 あまり意識してはいないが、目と目を合わせて話すというのは情報量が多いのだろう。 言っていることの真偽やその人自身の思いが目に現れる。 だからこそ、ITの産業はシリコンバレーに集まっているのだ。 今はメールが発達し、何でもメールでやるようになった。 若い人は隣の人にもメールを出す時代。 それと同時に日本企業のパフォーマンスも下がったような気がする。 それに加えて、若い人の喫煙率は低い。 ぼくも病気をして禁煙したが…。 CADが普及して製図台がなくなり、電子帳票化が進んでアナログなものへの接触が減った。 それは飛躍的に生産性を上げたが、なにか大事なものがなくなったのかもしれない。 企業によっては、そういう弊害をなくすために、いろいろな取り組みをやっているとも聞く。 しかし、あのリフレッシュコーナーになかなか勝てないだろうなあ、とぼくは思う。 一日中じーっと座って、電話も減り、メールの連絡をし合う会社は効率という観点ではいいんだろうが、何か欠けているような気がする。 ぼくはリフレッシュコーナーのおかげで、いい時代を経験できたのかもしれない。 |
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