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2015.10.06 Tuesday
基礎ゼミ
大学入試センターが調査結果を出した。日経の記事だ。
高校生の学習行動の格差について、言っている。 いま、大学入試センターでは、センター試験の改変をやろうとしていて、それをどう具体化するかの検討中だという。 しかし、理想に走る前に、高校生の現状を見てみよう、というのが記事の内容。 まっとうな意見だと思う。 調査は首都圏のランク別の進学校(有力進学校と半分程度が推薦、AOで進学する中堅校)で行われた。 結果は高校1年から3年にかけて学習時間は増えていくが、要は有力進学校と中堅校の差が大きいのは、1,2年の時期だということだ。 3年になったら入試を控えて勉強をするのだが、1,2年の積み重ねが足りないとシンドイ、ということだろう。 おまけに、推薦やAOで入学する人なら入試は秋には終わるので、追い込みをしなくてもいい。 だから、学習時間の平均値に差ができるんだろう。 いずれにせよ、高校に入った時に、いかに学習習慣をつけるか、だという。 大学も同じだ。 入学直後が最初で最後のチャンスなのだと思う。 それを逃すと、もう惰性で行ってしまう。 ぼくは勉強をしなかったクチだが、入った時にダレてしまった(言い訳だけど)。 最初が大事なのだ。 だから、下位の大学は初年次演習や基礎ゼミという名称で、入学直後のゼミ形式の授業に力を入れている。 午前中の授業(月曜の1限などが多い)で比較的少人数。 毎回課題を出し、仲良しができるようにグループ学習をやり、場合によっては学外に出て行って遠足のようなことをやったりする。 学内の施設の使い方を実習し、レポートの書き方を教え、インターネットの使い方を実習させる。 逆に言うと、初年次演習が充実している大学は苦しい大学だと言える。 シラバス(授業内容)が公開されている大学なら、見てみればいい。 ある大学の経済学部の1年生向けのシラバスの内容は下記のようになっている。 関西の中堅クラスの大学。 ・教員を知り,知人・友人を作ること ・大学の学習環境に適応すること ・勉強のしかたを学ぶこと ・経済学とはどのような学問であるかを知ること ・世の中の出来事に目を向けること 古い世代の大学しか知らない人にとっては、びっくりする内容だろう。 経済学、という言葉を除けば、「大学」を「高校」や「中学」に置き換えても十分に成立する。 ひょっとしたら、経済学とはどのような学問か知らずに、どうして経済学部を選んだのか、という人もいるかもしれない。 でも、それが現実なのだ。 学習習慣がついていない学生を入れるのなら、こういうことを真面目にやらないといけない。 現実には、基礎ゼミが終わると、また元のもくあみ、というところも多いが…。 また、その基礎ゼミを、今の大学の教員が教えられるのか、という問題は大きい。 高校までの先生は一応免許を取っているが、大学の先生は免許などない。 教え方を教わらないまま教員になる。 だから、ひどいクラスになると騒乱状態になったりする。 昔の大学教員の範疇を超えているのに、旧態依然とした教員採用システムを取っているからだ。 そういう問題が多くの大学に起こっている。 それをもっと大きな声で大学は言わないといけない。 そうしないと、世間の人はわからない。 文科省は学校という閉じられた世界の中で、大きな失敗をしているんだと思う。 記事はこう締めくくる。 「おそらくそれなりの刺激剤でなければ、1日30分の学習もしないという高校前半期の生活は変わらない。ただ同時に指摘しておくべきは、効果的な刺激剤は、序列化や試験漬けといった問題を再び呼び起こす可能性があるということだ。 入試改革のみならず教育界では、獲得すべき資質・能力を柱に据えた改革が試みられる。こうした議論を展開したくなる気持ちは理解できるが、柱とすべきは、現状の正しい理解であろう。そうでなければ、問題の所在を見失ってしまう。どの層の学習をどのように変えるために、何が必要なのか。何を優先すべき課題だと捉えるのか。地に足を着けた広い視野からの検討が求められる。」 もっともな意見。 大学も一緒だ。 早くしないと、間に合わないぞ。 |
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