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2015.07.19 Sunday
デイヴ・バリーの40歳になったら デイヴ・バリー 集英社
デイヴ・バリーというのは、アメリカのコラムニスト。
ユーモア・コラムニストと書いてある紹介ページもある。 1947年生まれだから、ぼくより10歳年上。 だから、今は68歳ということだ。 1988年にはピューリッツアー賞も受賞している。 この本は彼が40歳になった時に書いた本。 アメリカで彼はベビーブーマー世代であり、その世代を中心に売れて、ベストセラーになった。 最初に書いてある。 「もちろん、ぼくひとりのことではない。歳を取るというのは、ひょっとすると、ケーブル・テレビなどより重要なライフスタイルの新潮流なのだ。その数ウン千万人にのぼるわれらベビーブーム世代、つまり「ミッキーマウス・クラブ」に熱中し、フラフープを回し、ビートルズをあがめ、髪を長くのばし、マリファナを吸い、ファンキーな踊りに狂い、愛あるセックスを営み、履歴書を書き、出世を追い求め、保険に加入し、フィットネスに気をつかい、ラマーズ法の講習を受け、母乳で子どもを育て、情報をコンピューターで処理し、住宅ローンを払い、夜間の父母会に出席し、名刺を交換し、CDを所有し、歯をフロスする伝説の大集団が、ついに、ひとり残らず、中年期に突入したのである。」 中年、という言葉は誰でも最初に聞くと、嫌になるものだ。 「問題は、心の準備ができていないという点にある。人生の大半の時間を、ほぼ同年配の連中と過ごしてきたぼくの正直な意見を言うと、集団としてのわれわれには、世の中を切り回していくだけの才知も円熟度も備わっておらず、それに必要な権限さえ与えられていない。自信を持って断定するが、われわれの多くは、ただ大人に見えるだけなのだ。」 こういうバリー節が全面に出ている。 日本には新聞のコラムニストという商売はないが、アメリカでは食えている。 マイク・ロイコやボブ・グリーンなど有名なコラムニストがたくさんいる。 もちろん、国が違ったり、環境が違ったりするので、書いたものにはわかりにくいものもあるが、ぼくは好きだ。 40歳になると、肉体の衰えが目立つ。 それについても書いている。 「四十になるということの最も痛ましい局面は、自分がもう、二十一歳のときと同じ肉体の持ち主ではないと認識させられることだ。少なくとも、ぼくにはその認識がある。シャワーを浴びながら、自分の肉体を見下ろして、ときどきこう叫びたくなるのだ。「おい、こいつは俺の体じゃないぞ!この体はウィラード・スコットのものだ! だが、これは極めて自然なことだ。つまり、浴室で叫ぶってのはね。でも、四十になることそのものは、ちっとも自然じゃない。野生動物としての人間の平均寿命は三十五歳前後だ、と、信頼のおける科学的資料が語っている(のを、新聞で読んだような記憶がかすかにある)。このことをよく考えてみてほしい。もし自然界で暮らしていたら、たとえ禁煙地域を選んだとしても、あなたは今ごろ、うじ虫のえさなのだ。」 ウィラード・スコットは太ったコメディアン。 こういうのが、なかなかわからないから、難しい。 この本には体のことや結婚生活、子供のこと、親になること、そして中年の危機、時間のやりくり、財政計画、政治のこと、スポーツ、そして年老いていく両親のこと、最後に偏屈のすすめが書かれている。 そのどれもが、ちょっとやけくそ気味のユーモアに彩られて書かれている。 中年の危機の項では、男の一生における時代区分というのがある。 年齢 区分 興味の対象 0〜2 幼年期 うんち 3〜9 無邪期 鉄砲 10〜13 覚醒期 セックス 14〜20 自立期 セックス 21〜29 充実期 セックス 30〜39 到達期 セックス 40〜65 ここで、中年男の危機が勃発する 66〜死 黙想期 うんち 文字通り、やけくそ気味だ。 「中年の危機は、たいていの場合、ある日の午後二時三十分ごろ、なぜか自分のきらいなものに全人生をささげてきたと気づくことによって引き起こされる。弁護士を例にとってみよう。彼は、たいへんな努力を重ねてきた。ビールを国産のもので我慢するなど、多大な犠牲を払って、法律学校の学資を捻出した。何万時間も勉強し、やっとの思いで試験に合格し、頭を下げて法律事務所に雇ってもらい、共同経営者になるため、何百という靴をなめて、ようやくその目的を達した。そして、ある日の午後、依頼人への退屈きわまりない書状、”願うらくは”だの、”前記の案件に対し”だのという規格化された紋切り型の語句で埋まった書状をしたためているとき、ふと、書いたばかりの部分を読み返してみると、”願うらくは、前記の案件を貴様の患部会議にてご淫蕩くださいますよう”とある。心理学の専門家ではない彼にも、潜在的な敵意がはっきり読み取れる。そこで、じっくりと考え始める。考えれば、考えるほど、自分が弁護士業にまつわる全てを憎んでいることがわかってきた。依頼人が憎い。(言うまでもないことだが)ほかの弁護士が憎い。初対面の人に職業を言うと、相手が”ナチの細菌学者”を見るような目つきになるあの瞬間が憎い。自分の事務所が憎い。法律文書のラテン語が憎い。書類かばんが憎い。とにかく、憎くて憎くてたまらず、彼はついに自分の本当の望みは全然ちがう職業につくことだと結論を下す。もっと楽しくて、のんきで、例えば、ハング・グライダーのインストラクターみたいな…。そう!それだ!一度、休暇のときにハング・グライダーをやってみたが、あれは楽しかった!」 中年の危機は突然やってくる。 そうかもしれない。 突然やってくるのではなく、突然気がつくのだろう。 誰しも一度はそういう思いに駆られたことはあるはず。 笑いの中に、真実が隠されている。 そんなコラム集。 アマゾンの古本を安く買った。 アマゾンの古本は便利だ。 |
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