考えたこと2

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大学の非常勤講師
こないだ、大学で教養を教えることについて池上彰が日経に書いていた。

アメリカはリベラルアーツ(教養)教育に力を入れている、と言われているが、そうでもない、ということだ。

「教養よりは、最新の資本主義の目標と需要を満たせるような人材の育成に力を入れるようになった」ということらしい。

その記事の中にこんな一節がある。

「これは、ひとごとではありません。日本の大学でも問題になっています。学部レベルの授業は非常勤講師の献身的な努力に任せっきり。非常勤講師の給料は時給計算。信じられないくらいに低く、これで経費を節減。浮かせた費用で高い報酬を払って著名な研究者に来てもらい、大学の名前をアピールする。こんなことがまかり通っていては、学部レベルの教育の充実につながりません。」

これは古くて、今も続く大学の問題だろう。

大学の教員は一般的に教養教育を嫌がる。
自分は専門を教えたいのだ。
専門を教えることで、自らの専門性も高くなるから、どんなへっぽこの大学教員でも専門を教えたいと思っている。

だから、日本の大学が大学院重点化をした時に、みんなこぞって大学院の教授になった。
名刺が「○○大学教授」から「○○大学 大学院教授」になるのには意味がある。
自分は専門を教えているということを表すからだ。
教養ではなく、専門を教えている、というプライドを満足させる。

一方で、「教養」を教えるのは難しい。
学部に入ったところの学生から、3年生あたりまでの学部生が対象。
その学問に関連した分野の知識や、なぜその学問ができてきたのかという歴史や、その学問の発展の過程、何の役に立つのかといった導入と発展の部分だからだ。
専門に対して造詣が深く、横のつながりもわかっていて、素人にもわかるように教えられることが必要になる。
だからこそ、教授や准教授でないと「教養」を教えることはできないのだとぼくは思う。

ところが池上彰が書いているように、この部分は専任教員はほとんどやらない。
給料の安い非常勤講師に任せているのが、大多数の大学がやっていることだ。
若い非常勤講師は一般的には献身的だ。
自分がどこかの専任教員になりたいから、必死にやる。
もちろん、教科書を読むだけ、試験は何でも持ち込み可というような教員もいる。
でも、それは年寄りの非常勤に多い。
そういう教員は、たくさんの学生が単位を落とすと、教務から怒られて次年度の仕事がなくなるから、という悪循環になっている。

マジメに頑張っている若い非常勤は、学生に力をつけさせたいから熱心だ。
そういう先生には学生も好意を持つ。
アンケートをとると、ベストティーチャーに選ばれたりする。
実際に授業を聞きに行くと、いつもはざわついている教室が静かで、たくさんの学生が授業を聞いている。
専任教員のクラスではうるさい学生も、授業がわかるし、面白いから静かに聴くのだ。
配布資料も多かったり、質問を投げかけたり、工夫もしている。
だからこそ、アンケートでベストティーチャーになるのだろう。

そういう非常勤の教員の授業をぜひ見学してほしい、などと言ってもほとんどの専任教員は見向きもしない。
忙しい、という一言で終わる。
大学教員は忙しくないとは言わないが、90分の授業を見学するヒマがないとは言えないのも事実。
理系の教員は知らないが、文系の教員は民間企業に比べるとヒマを持て余しているようにしか見えない。
だからこそ、あのしょうもない教授会を何時間も続けることができるのだ。

ぼくが知っていたベストティーチャーは、どこかの大学の専任教員になった。
分かる人には、わかるんだろう。

あの先生を採ったらいいのに、というと、あれは教養教育だから…という返事が返ってくる。
教養教育がちゃんとしていないと、専門教育は成り立たない。
そんなことが教授会にはわからない。

いい先生だったし、いい授業だったのに…。




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