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2015.05.07 Thursday
サンデルのプレゼン
あの元祖白熱教室のマイケル・サンデルが、TEDという教育テレビの番組でプレゼンテーションをしていた。
市場主義と市民社会というような題名。 市場主義というのは、極論するとお金さえあれば何でも手に入れることができる、というものだ。 それが市民生活を支配しようとしている、というのがサンデルの問題意識。 サンデルは一例を挙げる。 裁判の傍聴をするために傍聴券を求める列ができるが、お金を持っているジャーナリストはお金を払ってその権利を買う。 そういう権利を売る会社があるらしい。 その会社はホームレスの人たちを使って、列に並んでもらって券を手に入れる。 ディズニーランドのアトラクションもエクストラのお金を払えば、並ばなくても乗れたりする。 刑務所では、お金を払えばいい部屋に泊めてもらえる。 そして、教育分野だ。 子供たちが試験でいい点を取ったり、本を読んだりしたらお金をあげる、という実験だ。 例によって聴衆に問いかける。賛成の人、反対の人手を上げて…。 反対の人はそういうことをすると、子供の内発的動機をそぐという。 賛成の人は実験なら試してみたらいいという。 サンデルは言う。 本を読んだらお金をもらえるということになると、本を読むようになるが、子どもたちは薄い本を選ぶようになる。 しかし、本当の問題は、何でも売り物にすることで格差の問題が大きくなることだ。 経済問題というより市民生活の問題である。 経済学者はことの善悪を考えないという。 サンデルの結論は、何をどこまで買えるか、ということについて議論をしないといけない。 そうでないと、市民社会の中でお金持ちとそうでない人の接点が離れていく。 これは民主主義にとってよくないことだ。 民主主義に完全な平等は要らないが、社会的な一体感は必要だという。 大事なのは社会的地位の異なる人々が触れ合うことだ。 普段の暮らしの中で交流することだ。 昔は野球場では金持ちも貧乏人も同じ席に座って野球を見ていた。 しかし、今は金持ちはラウンジ席を買う。 広々とした席でピザやステーキを食べながら見ることができる。 金持ちと貧乏人は全く触れ合わない。 そういうことは、市民社会にとってよくないことではないか、とサンデルは呼びかけてプレゼンを終えた。 格差が世界一のアメリカにこういう哲学者がいる。 |
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