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20代のための「キャリア」と「仕事」入門
20代のための「キャリア」と「仕事」入門 塩野誠 講談社現代新書

著者は、東洋経済オンラインで「キャリア相談:君の仕事に明日はあるか?」を連載している。
著者自身も、ゴールドマン・サックス、ベイン&カンパニー、ライブドア等への転職や起業も多数経験しているらしい。

はじめにー知っておきたい「働く」ということ、という章にこう書いてある。

「みなさんは「普通の働き方」というものを、高校や大学を出て新卒で一斉に就職し、そのまま定年までその会社で働き続けることと思っているかもしれません。
たしかに少し前の時代まででしたら、それが当たり前だった部分がありました。しかし、そのような終身雇用を前提とした新卒の一括採用は、昔から日本の一部の大企業の話であり、より正確には男性の正規雇用社員についての話でした。しかし今、みなさんが固定概念として漠然と思っているこうした働き方は、大きく揺らいでいます。
文部科学省によれば、2013年春の大卒者は約56万人で、このうち約37万人が就職したそうです。つまり10人中6人しか新卒で就職していないことになります。10人中、残りの2人は無職だったり、アルバイト契約社員だったり、非正規雇用の状態にあります。こうした数字から、新卒で就職してその会社に勤め続けるという「普通の働き方」がすでに「普通ではない」ことがわかるかと思います。」

大人の世代と、若い世代は同じではない。
それはずっと昔からそうだったのだが、この数十年の変化は大きい。
というか、高度成長の時代を過ごしたぼくらの世代が特殊だったのかもしれない。
明日は必ず昨日より豊かになる、ということが当たり前で、全く疑わなかった時代だった。
そしてこう書く。

「街に出ればエンターテインメントとモノが溢れて豊かに見える日本も、その社会システムの制度疲労により、生きていくのがとても困難な時代を迎えています。大企業に勤めていた大卒男性社員が40代でリストラに遭い、派遣社員として月収20万円以下で働き、正社員になろうと面接を受けてもどこにも採用されないという状況が日常となっているのです。現実には40歳を過ぎてからの正社員での転職は極めて困難です。」

そうだと思う。
今はまだ日本は豊かだ。高度成長時代に貯めたストックがある。それを担保に借金し、生きていっているのだ実情だと思う。
でも、いつまでも借金を続けることはできない。
だから、変わらないといけない、というのが現在だと思う。

この本は一問一答形式で、若い人たち(だけとは限らないが)の仕事に関する疑問や悩みについて答える、という本になっている。
章立ては以下。

はじめに:はじめにー知っておきたい「働く」ということ
第1章:ようやく就職先が決まったのに家族は大反対です
第2章:友達より年収が低いのはなぜ?
第3章:転職するなら35歳までに決断したほうがいい
おわりに:おわりにー大人たちの攻撃で討ち死にしないために

第1章から、いくつか抜き出してみる。

相談1「キャリアを考える」ってどういう意味ですか?

答えの部分から抜粋する。

「みなさんが学生の時や社会人の早い段階からキャリアについて考え始めるのは、決してムダなことではありません。ただし、世の中は偶然や変数に満ち溢れているので、ほとんどの場合はみなさんの思いどおりにはいきません。思った通りにはいきませんが、人生の中でさまざまなイベントが起きた時に初めて、「こんなことが起こるなんてまったく考えてなかった、どうしよう」と慌てるのではなく、たとえば就職や結婚、またはリストラや病気といったイベントが起きた時に備えて何をやっておくかを、なるべく若いうちに考えておいて損はありません。考えておかなければならないほど、この国の経済状況は厳しく、頼ることはできないのです。おすすめは悲観的な前提を踏まえつつ、環境の変化を楽しんで生きることです。」

「みなさんが望むと望まざるにかかわらず、社会の変化として、みなさんの仕事は誰がやっても変わらないコモディティ業務と呼ばれるマニュアル通りの単純労働と、非常に高度な知識を要求され、高付加価値を提供する専門的な労働とに分かれていきます。みなさんがすでに気づいている通り、簡単に誰かにとって代わられるようなコモディティ業務に従事する人たちの雇用は、不安定になっていきます。そのような仕事を代替するのは日本以外のどこかの国の人でも、企業側にとってみれば「問題ない」のです。
仕事をしていく中で、求められるものは時代によって変わってはいきます。ただし、みなさんがキャリアを考える上で、「自分にどんな値段がつくか」ということを意識してくことの必要性は不変です。みなさんは値段がつく仕事を選択肢として持つために準備すべきなのです。準備ができていれば職業選択の自由が手に入りますが、準備をしていなかった場合、選択の余地はありません。未来の自由のために働き方を考えましょう。」

この筆者は75年生まれだから、39歳だ。その若さだから、高度成長の時代も少しは知っているが、ほとんどは日本の低成長の時代を生きている。
その彼が、この国の経済状況は厳しく、頼ることはできない、という。
そのとおりだと思う。
ぼくらやその上の世代は、本当に悪いことをしたと思う。
高度成長にあぐらをかいて、後の世代につけを回す借金ばかり増やした。
そこにIT革命が起こり、人が考えなくても出来る仕事が増えた。それに伴って非正規社員が増えたのだと思う。
それが、筆者が言う「コモディティ業務」というやつだ。
だから、社会にでる前に自分の価値を上げなくてはならない。
大学生をやっている時に、アルバイトでコンビニや居酒屋でコモディティ業務をしている場合ではないのだ。

相談2 何のために仕事をするのでしょうか?

「率直に言えば、日本という国の「段階」として、高度経済成長期に考えられた「今は苦しく不安定な生活だけど、未来はきっと安定的で豊かになる」という図式が、完全に崩れたのです。みなさんは生きていく中で、将来の不安定さを「当たり前」のこととして考えなければなりません。こうした中で日本の企業も余裕がなくなり、その継続性もわからなくなっています。しかし、逆に考えてみれば、一生どこかの会社に勤めなければいけない決まりはありませんし、みなさんが何かの「価値」を作り出せれば、それは仕事になります。みなさんにとってはごはんを食べて暮らしていくための「手段」である仕事が、誰かに必要とされたり、誰かに必要とされることがみなさんにとってうれしかったりすると、お金を稼ぐ「手段」だった仕事そのものを楽しんで生きていけるかもしれません。日本人に職業選択の自由がなかった時代があったことを思えばとても贅沢なことです。」

「仕事の目的はお金をもらってごはんを食べることなので、みなさんが就職活動をしていく中で、「今はやりたい仕事がないから」と何の仕事にも就かないでいるよりは、どんな仕事でも関わっていたほうがいいです。どんな仕事でもムダになりませんし、仕事をしない空白期間があると、あとから頑張って働こうと思っても他の諸事情によって、たとえば体力がなくなっていたり、育児や介護に時間をとられたりして、フルパワーで仕事をやりたくてもできないことがあります。これは社会に出る前に知っておくべきです。」

繰り返しになるが、ぼくらは幸いにも、高度成長の時代に人生の大半を生きることができた。
「人生」というのは普通名詞だが、誰のものでもない一般的な人生など、どこにもない。
人生というのは、常に誰かの人生であって、個別的なものだ。
戦争が終わり、戦後が終わり、そして高度経済成長があった。
そして、経済成長が終わり、高齢化が起こり、少子化が起こり、低成長の時代に入りつつある。
今の年寄りの世代は、もっと若い人たちのことを真剣に考えないといけないと思う。

「一見華やかそうに見えても、実は地味な作業の連続で「こんなはずじゃなかった」という仕事が世の中にはたくさんあります。とにかく早く気づいて、早く撤退すれば傷も浅くて済みます。あとは、新卒の時に「絶対にこの仕事じゃなきゃダメ」などという気持ちは捨てたほうがいいです。どこかで中途で入ってもいいですし、自分で商売を始めてもいいわけなので、新卒で、「その会社に入らないといけない」「その仕事に就かないといけない」という考え方は、今の時代には全然合っていないので、しっかり捨てましょう。」

その通りだと思う。
まずは組織に属して仕事をすることが第一。
やりたいことはできたらいいが、できなくても構わない。3年経ったら考えよう。

相談11 新卒で就職するならやっぱり有名企業?

「一つの例ですが、新人教育というのは企業にとって大きなコストなので、「新人教育しているヒマはないよ、自分で何でも考えてやってね」というベンチャーよりは、古くから続いている有名企業や大企業の方がビジネスマナーをうるさく教育してくれることが多いものです。大企業に入社することは、名刺の出し方、電話のかけ方、人の迎え方などという社会人のお作法を最初に学ぶにはいいかもしれません。
そんな初歩的なことだけでなく、社会人になって早い段階で会議の議事録の書き方などをきちんと学んだかどうかは後になって効いてきます。信じ難い話ですが、歳を取っても会議の議事録で何を書いているんだかわからない人はたくさんいます。」

「また、大きな会社で働いていると、大きな仕事のごく一部分しかやったことのないことが多いので、若ければ若いほど全体像を理解していない場合があります。そうすると、大企業で数年働いていても、本当に、「ビジネスマナーしか知らない人」になっているかもしれません。」

大きな企業に入るメリットもデメリットもあるということだ。
今や大きな会社だから潰れないということもない。
あの銀行が統合を繰り返し、今やわけのわからない名前になっているのを見ればわかるだろう。

相談13 ベンチャーに就職するのは危なくないですか?

「ただ、ベンチャーのかなり初期の段階から参加して、もしもその事業が大きくなった場合は、そのリスクを負っただけの大きなリターンがあることも確かです。ベンチャーに行って、若いうちからどんなに小さくても経営に関わるという経験は、将来ムダになることはありません。そこに飛び込むことによって得られるリターンは、みなさんがベンチャーに何を求めるかによって変わります。金銭的なリターン以外にも、若い時の何物にも代えがたい濃い経験がリターンとなるかもしれないのです。」

これもその通り。
大きな会社かベンチャーか、という選択ではなくて、会社で何を伸ばしていくか、ということを考えればいいんだと思う。
今の時代、「絶対大丈夫」という会社はないので、自分がどんなスキルをつけることができるか、ということを考えればいいのだ。

相談14 人助けがしたいのでNPOで働きたいのですが

「世の中のためになる仕事に就きたい」といって、NPO(非営利活動団体)やNGO(非政府組織)に就職を希望する学生がよくいます。でも、ここでよく考えていただきたいのは、何もNPOやNGOだけが、人助けをしたり世の中のために役立っているわけではない、ということです。
世の中にあるたいていの仕事は、人様の役に立っています。街の定食屋さんは日々誰かを幸せにしているでしょうし、バスやタクシーは誰かに利便性を提供しているので商売が続いています。NPOに入ることだけが、自動的に人の役に立つわけではありません。本当にNPOで働きたい場合は、利益を追求している一般的なビジネスより高度なマネジメントがわかっている必要がありますし、ある意味、普通の会社よりもお金に対して貪欲でないと続けられないのです。」

これもよくある勘違い。
NPOが世の中の役に立っているのと同じく、会社も役に立っている。
下手をするとNPO団体の方が、役に立っていないと思う。

利潤を追求するという事の悪い側面ばかりを強調する人たちが、学校には存在する。
昔の左翼的な考え方の人が残っているのだ。
もう時代遅れだと思うのだが、そんな意見を聞いてびっくりした。
今や利潤の追求は、社会から認められないとできない。
考えたらわかると思うのだが、学校の先生には頭の固い人が多くて困る。

相談17 どうすればエリートになれますか?

「ただ、誤解している人も多いかもしれませんが、たとえば学歴について言いますと、世界の先進国の中で日本は学歴が低い国です。日本では大学名を入試偏差値順で並べて、その上の方を高学歴を言っていますが、本来はそれを高学歴とは呼びません。高学歴という場合は修士であったり博士であったり、大学院以上の専門課程において高度な専門教育を受けていることを指します。海外ではベンチャーの経営者が「博士号を2個持っています」「理系博士で弁護士です」「実は医者です」などというのはわりと普通です。そもそも、日本に比べると韓国やシンガポールの受験戦争の方がよっぽど過酷です。
では世界的にはどうかというと、子供の頃に「自分は全然勉強しないのに、すごくテストができちゃうな」とか、「別に練習しているわけでもないのに、すとく運動ができちゃうな」とか、何らかの自分の才能に気づいて、こんな才能を天から授かってしまったからには、世のため人のために、何かやらなきゃいけないと思った人が本物のエリートです。」

「みなさんがエリートを目指して、いきなり世界平和レベルのことを成そうとするのは難しいので、まずは何よりも目の前の仕事をこなし自分で稼いだお金でごはんを食べられるようにする。または自分の家族にごはんを食べさせられるようにする。少しでも他の人のために何かしようと思うのなら、満員電車で人を押しのけない、近所の人にしっかり挨拶をするなど、日常に中には他人をちょっと幸せな気分にさせる機会はたくさんあります。(きちんと挨拶もできない大人はわりと存在します)。その上で、もっと人の役に立つことが自分にとって快感であればやればいいのであって、それは人に役に立つことが好きだったり、気持ちよかったりしないとなかなか続きません。世のため人のため的な行為は、続けることが難しいものです。」

過去に、世界のために働きたい、といった学生もいた。
では、自分に、世界のために何ができるのか、といったら考えていた。
就職活動はうまくいかなかったと思う。
あまりにも大きな夢を持って、自分の実力とのギャップでどうしようもなくなったのかもしれない。
どうして、ちゃんと就職して、税金を払うことが世界のためになる、というふうに考えられないのかと思ったのだが…。

相談23 ロジカルシンキングって本当に役に立つの?

「普通はダラダラとしゃべった後に、結論がイエスかノーかもよくわからないという人が大半を占めます。ある論点に対して、イエスかノーかの結論を最初に言い、そのような理由が何点あって、それぞれの理由は○○ですという話し方ができる人は非常に少ないのです。なぜロジカルシンキングブームが続いているかというと、短時間のうちに正確に意志が伝わり、相手にも「あ、この人、頭の回転速いな」「キレる人だな」という好印象を与えるからです。
ロジカルシンキング風な話し方は、地頭のよさというより、心構えや習慣の問題でしかありません。必ず最初に結論を話し、自分がその論点に対してイエスなのかノーなのか、自分のポジションをとって明確に述べてから理由を説明するというのがポイントで、それらを自分に課すだけでまったく世界が違ってきます。人は普段からそんなことはしていませんので、論点に対し自分のスタンスを明確にするだけで志向が整理されます。」

「論理的思考は元来、何かの問題解決を効率的に行うためのツールだと考えられますが、たいていの人は解こうとする問題からして間違っています。論点が間違っていたり、あるいは問題設定自体を間違う場合も多いです。ビジネスにおいて難しいのは、学校のテストであれば問題がすでに書いてありますが、ビジネスでは問題そのものも自分で設定しないといけない点なのです。」

論理的に話すこと、論理的に考えること、これらは訓練でできることだ。
これはぜひ学生時代に鍛えてほしいと思う。

全般的にこの本は質問、解答形式でわかりやすく書いてある。
就活生に特化したものではないが、読むことで「キャリア」と「仕事」の入門ができるようになっていると思う。

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