考えたこと2

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もっとコロッケな日本語を
もっとコロッケな日本語を 東海林さだお著 文春文庫

中古を4冊まとめて買った最後の1冊。
相変わらず面白い。

2003年に出た本だが、この年に著者は66歳。
今は74歳になっている勘定。
この時点で、文春文庫に東海林さだおの本は53冊出ている。
ほとんどは連載されていたものだと思う。

この本にもスルドイ考察が書かれている。

「ドーダの人々」という項では、人が自慢をするのが好きだ、ということが語られる。
ドーダというのは、自慢のことだ。
油断をすると、ついついドーダしてしまう、とかさりげない会話にも、ドーダが入っているとか…。

でも、この本にかかれていることで、今ぼくがすごく共感するのは「スローフードの時代」という項目。
ちょうど2001年〜2002年というとバブルが崩壊して、本格的に景気の悪化が感じられるようになってきた時代だった。
この頃、これからも日本は持続的に成長できるのか、ということが問題になり始めたのだと思う。

『「中国、インドがやがて先進国の仲間入りをし、それぞれ13億、10億の人々が、現在の先進国なみの生活水準になれば、地球の資源はアッというまに失くなる。しかし、彼らの先進国化を誰も止めることはできない」と言って暗く目を伏せる評論家がいる。
じゃあどうすればいいのか。
「みんなの考え方を変えなければなりません」
その評論家はあっさり言った。あっさり言ったけど、その次に言葉はなかった。
そうなんだよね。考え方を変えなければならない。
もうこれから先、人類は現在以上の生活水準は望めないのだ。
後退していくだけなのだ。
人類はこれまでイケイケで突っ走ってきた。そしていま、イケイケが破綻しつつある。』

ぼくはその頃、自動車産業に関わっていた。
いろんなメーカーが中国に出ていき、彼の地にモータリゼーションを起こそうとしているのを見た。
中国でモータリゼーションが起こったら、偏西風に乗って日本に排気ガスが来る。
ガソリンが高騰して不足する。
でも、中国の人たちに、我慢してくれ、とはいえない。
ぼくらが何も考えずにしている生活を、やめてくれとはいえないのだ。

だから、生活水準は後退していかざるをえない。
でも、いきなり落とすのはつらい。
そこで、努力目標を設定しようという。

『皮を剥いたミカンから四房をいっぺんにつかみ取り、四房をいっぺんに口に放りこむ。四房をいっぺんに噛みつぶす。
最近はいつもこういうふうにミカンを食べている。
三房か四房のかたまりずつ食べるから、ミカン一個を三口で食べ終える。
そのときコタツのかたわらにあった東京新聞が目に入った。東京新聞の「あけくれ」という投書欄である。
その投書のタイトルは「みかんの房」というものであった。
千葉県の三十六歳の主婦の投書で、要約すると、ーー昭和十年生まれの父の家は貧しく、ミカンさえ特別な果物だった。だからミカンを手にすると、何房あるか、必ず数を数えた。そして、ミカンの房は、必ず九個か十一個であることを覚えた。だから、十一個のときは二個多いと喜んだ。柑橘類の房は、花の構造上、九個か十一個だろいうことをあとで知った。子供がミカンの房を数えた時代が日本にもあったのだーー。
(中略)
わたくしは何を言おうとしているのか。
今はミカンを三口でポイで、ハイ、次、だが、昔はずいぶんゆっくり、丁寧にミカンを食べていたのだ、ということを言いたいのだ。ゆっくりと、たっぷりミカンを楽しんでいたのだ。
まず房の数を数えることから始める、という人さえいたのだ。
”三口でポイでハイ次”より、何倍も豊かな生活をしていたと言えるのではないか。
このあたりの生活、この時代あたりまでなら戻ってもいいのではないか。
とりあえずこのへんを、生活水準の後退の努力目標にしてはどうか。
コタツに入ってミカンのスジを丁寧に取って食べていたころの生活、いまから考えるととても懐かしい。
なんだか羨ましいような気さえする。』

引用が長くなったが、2000年ごろにそういうことを考えた人がいる。
おもしろおかしく書いているが、書かれていることは本当に問題だと思う。

その他にも本当に面白いことも書いてある。

なかなかいい本だ。

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