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2013.11.30 Saturday
遙かなるケンブリッジ
遙かなるケンブリッジ 一数学者のイギリス 藤原正彦著 新潮文庫
藤原正彦の本は読みやすく、面白いので買ってあった。 この本は若いころアメリカに留学した著者が、結婚して大学の教授になり、そしてイギリスのケンブリッジ大学に1年間の研究滞在した時の紀行記。 寝ながら読んで、今日は大阪に電車で出張だったので、電車の中と喫茶店で読み終えた。 ケンブリッジ大学はオックスフォードと並んでイギリスの頭脳と言ってもいい。 数々の近代の自然科学分野での発見をした学者たちが、ここの出身。 家主と話をしていたら、祖父の話になり、話を聞いていたら家主の祖父はノーベル賞をもらっていた、ということだ。 イギリス紳士は自慢することを毛嫌いし、慎み深さを尊ぶという。 威張れることがあったら素直に威張る、アメリカ人とは対照的とのこと。 また、必死に頑張るのは性に合わないらしい。 実績のあるケンブリッジの教授にして、半分の力でしか研究していないのではないかという。 この本の一番のクライマックスは次男がいじめにあったことだろう。 イギリス人の人種差別について、実際の経験に基づいて語られる。 ロウアークラスの人々の、アッパーミドル以上の人に対する敵意もすごいものがある。 これらのロウアークラスの人々をどうしていくかが、イギリスの問題だ、という。 平成3年の刊行だから、今から22年前。 サッチャーが首相の頃である。 結局は校長に直談判し、解決を見る。 でも、そこに至るまで家族の葛藤がある。 異国の地で大変だったろうと思う。 この当時は日本はまだ豊かだった。 豊かさのちょうど終わりの時期。 ある意味絶頂期だったのかもしれない。 だから、著者も日本と比べて、イギリスの凋落を憂いている。 しかし、今の日本も同じこと。 もちろん、経済的にはまだイギリスよりもマシ。 ただ、生活の質や伝統を考えると、イギリスはまだ豊かかもしれない。 色々と問題を抱えた国ではあるが、しぶとい国だと思う。 それには、ユーモアが絡んでいるのかもしれない。 |
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