![]() |
2012.11.15 Thursday
システム1 システム2
人間の認知には、「システム1」、「システム2」の2種類があるという。
これはノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマンという行動経済学者たちが考案した。 Wikipediaによると、「システム1は直観的な思考を、システム2は合理的な思考を支えている。システム1は、我々が日々直面する無数の意思決定の場面で、迅速に判断を下すのに役立つ。しかし一方で、システム1はバイアス(偏見)を生み出し、時に合理的・論理的な思考を妨げてしまう。」とのこと。 「システム1」というのは、対象の事を聞いたときに、直感的に「イヤだ」とか「やめとこ」という心の働きだろう。 これがないと、日々の判断にも困り、物事を決めることができなくなる。 一方で、システム1は直感的であるが故に、気づかないうちに偏見や論理的な偏りを持っている可能性がある、ということだ。 それを「認知バイアス」という。 気づかないうちに、間違いを犯しているかもしれない、ということで、これを見抜くための12個の質問があるという。 「意思決定の行動経済学」という本でそれが紹介されている。 まずは意思決定者が自問すべき質問として、 (1)提案チームが「私利私欲にかられて意図的に誤りを犯したのではないか」と疑われる理由はないか? (2)提案者たち自身が、その提案にほれ込んでいるか? (3)提案チームのなかに反対意見があったか? という3つがある。 要は、意志決定に関して、「私的なものが絡んでいるのか」「惚れ込んでいるあまり、楽観的な結論を出していないか」「全員賛成というのは、オカシイ」ということだ。 特に、(3)は日本では問題にされないことが多い。 全員一致を旨としている会議も多いくらいだ。 でも、それはおかしなことである、というところがアメリカらしい。 次に提案者に問うべき質問として、 (4)顕著な類似性が、状況の分析に大きく影響するおそれはないか? (5)信頼できる代替案が検討されたか? (6)一年後に、同じ意思決定を繰り返さなければならないとしたら、どのような情報が必要になるか?それをいま入手できるか? (7)数字の出所を承知しているか? (8)「ハロー効果」が見られないか? の5つがある。 (4)は非常に多い事例。「よそではこうやっています」というやつ。組織によってはほとんどこういう理屈で物事が決まっていくところも多い。しかし、落とし穴がある。「よそ」と「うち」では事情が異なっているということだ。そこがどの程度考慮されているか、ということになる。 代替案の検討というのは、上の(3)と絡んでいる。 全会一致で決まりました、というのは怪しいということだ。 (8)のハロー効果とは、ある対象を評価をする時に、いいところに目がいって、悪いところが見えなくなるという現象らしい。ハローというのは挨拶ではなくハレーションとかのハロー。光り輝くというような意味。 全会一致で決まった場合は、ハロー効果があると疑った方がいいと思う。 そして、最後に提案を評価するための質問というのがある。 (9)提案者たちは過去の意思決定にこだわりすぎていないか? (10)基本となるケースは楽観的すぎないか? (11)最悪のケースは、本当に最悪なのだろうか? (12)提案チームは慎重すぎないか? (9)の意味は、過去の失敗を取り返さないといけない、というような場合を言っているらしい。 あまり過去にこだわりすぎると、大きなリスクを冒してしまう、ということだ。 そして最後の3つの質問は、どれくらいの可能性を追求して答えを出したかという事を聞くのが目的。 いろいろなケースがあって、最悪の場合はこうなる、とか、普通にいったらこれくらいにはなる、とかいうケースを検討したのか、ということ。 慎重すぎるのも、大胆すぎるのと同じくらいヨクナイということらしい。 行動経済学というのは、面白い。 認知のバイアス、などというものをカウントして、人間はどういう間違いを犯しやすい存在か、という事を研究している。 ノーベル賞の受賞者がこの分野に多いのも納得できる。 人間は合理的な行動を取る、という前提でできていた経済学というものが、どうして現実と合わないのか、ということを突き詰めると、こういう結果になるということだろう。 この分野、日本は不得意だ。 どうしてだろうか…。 |
![]() |