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2012.11.02 Friday
藤本義一
藤本義一、というと読売テレビで、イレブンPMの司会をしていた作家。
平成生まれの人は知らないだろう。 ダンディーな人だった。 いつもブレザーを着て、アスコット・タイをつけていたような印象。 作品は残念ながら、読んだことがない。 ラジオ、テレビ、映画、舞台などの脚本を数多く手がけたと思う。 話術も巧みで、まるで落語家の枕を聞いているかのような話もできる。 笑いについても一家言あり、明石家さんまや島田紳助、松本人志といった芸人は酷評された。 今の日本の笑いを考えると、この藤本義一の評価は正しかったと思う。 笑の会という、漫才師や漫才作家の会の代表を務めていたこともあった。 たしかに、今の日本では、明石家さんまや、今はもういない島田紳助は人気がある。 藤本義一が酷評した芸人は売れる、というジンクスまでできたらしい。 しかし、藤本義一が言いたかったのは、文化としての笑いの質、だと思う。 そんな笑いで、笑っていていいのか、ということだ。 さんまや紳助の笑いは、彼らを知っている人には面白いが、知らない人が聞いても全く面白くない、という笑いだ、ということを藤本義一は見抜いていたのではないか。 きっとそうだと思う。 その背景を知っている人だけが面白い、という笑いを「楽屋落ち」という。 今や日本中「楽屋落ち」だらけだ。 日本中が楽屋になってしまったのが、今の状態だろう。 それを日本人が選択するのなら、仕方がない。 ぼくには止める力もないし、義理もない。 きっと草葉の陰で藤本義一もそう思っているに違いない。 ぼくにとっては、作家というより「タレント兼笑の会の代表」という存在。 関西がメインで活動していたが、ぼくらの世代以上なら確実に知っている人だ。 その藤本義一が亡くなった。 10月30日。 79歳。 田辺聖子や桂米朝らが死を悼んでいる。 白髪のダンディー。 合掌。 |
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