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2012.09.29 Saturday
インドネシア日記
出張で行ったことがある。
書類を探していて、偶然1997年の日記を見ていたら、こんな文章があった。 今から15年前。ちょうど40歳の時。 当時のインドネシアの状況を思い出して、一人考えてしまった。 文中のAB3というのは、インドネシアのポップグループのことです。 以下抜粋。 テストもうまくいったし資料も出来たので、今日は休み。昼から買い物に連れていってくれるとのこと。AB3のカセットを買うことにする。それから何かいいものがあれば子供に買って帰ろう。日曜日はさすがに車は少ない。この家の近所も朝7時前だが静かで、にわとりや山羊の鳴き声が聞こえてのどかな雰囲気である。ウオークマンでFMを聞く。局によっては英語の曲ばかり流しており、日本のFMを聞いているような感じだ。DJも英語を喋る人もいるので、それを聞いているとまるでFM802を聞いているのと同じである。選曲も良く、結構楽しめる。 昨日の夜のダンスミュージックというプログラムはなかなか良かった。88.7MHz、87.6MHzがお勧め。ただ、どうも1時間おきにニュースをやるのだが、ニュースのときは全ての局が同じになる。ということは、ニュースは一つしかないということで、このあたり、もう少しジャーナリズムが発達しないと中産階級の台頭ということが難しいのかもしれない。 こちらに来て昨日初めて子山羊を見たが、かわいいものである。何でも子供はかわいいのかも知れないが、親についてぴょんぴょん飛んで走る姿を見ると、ほほえましい。また、工場のそばでは昨日の昼過ぎから牛が出てきた。えさを食べさせに連れてきているとのこと。路肩の草を食べていた。山羊などは中央分離帯の草を食べていたりして、時々道路を横切るので、注意が必要である。 そういえば、昨日の帰りにアジズさんから賄賂のことを聞いた。この国ではまだ賄賂の風習がのこっており、いろんなところで横行しているらしい。アジアで3番目に賄賂の多い国だ、とのこと。1番は中国で2番がフィリピン、3番がインドネシアとのこと。何でも大企業の会計では人件費が5%で、インビジブルマネーが25%と言っていた。インビジブルマネーというのが使途不明金と同じかどうかはわからないが、大変な金である。アジズさんとしては、こういう状況は良くないので、何とかしたいがまだまだインドネシアは建設途上なので仕方ない、という感想。僕もきっといつかはいい状態になるでしょう、と気休めかもしれないが言っておいた。いろんな意味で南北問題は難しいと思う。 上海から帰ったときも後で南北問題の本を買って読み、この問題は大きいなあと思ったが、のどもと過ぎれば熱さ忘れるで、すぐに頭から無くなっていたが、今回インドネシアに来て、やっぱりこれらの発展途上国の今後を思うと、どうなるんだろうと思わされる。この国の人たちの消費文化への欲求が満たされるときには、この星の資源やエネルギーはどうなるのか、文明が進歩する、先進するということは本当にいいことなのか、ものが売れたり、安く作れるからと言ってどんどん南の国々に北から投資をし、資本主義の枠の中に入れ、消費文化を教え、物を買わせ、エネルギーを使い、自然を破壊して、一体この星はどうなっていくのだろう。上海から帰ってから読んだ南北問題の本には、東西のイデオロギー問題が終わった今、世界にとって最も重要な問題は南北の問題であり、環境汚染、人工問題、食料危機等も南北の問題となってくると書いてあったと思う。それは実感である。本当にどうしていったらいいのか、一人が考えてもどうにもならないとは思うが、世界的に何らかの指針が必要で、そのためには国という枠組みを越えて真剣に考えるような事が必要だろう。でもそんなことはきれい事で、今は北の国々が競って安い人件費で物が作れ、たくさんの人がいるので市場がある、という事で南の国々に進出してきており、このままいくとエネルギーや食料はえらいことになるだろう。日本ももっと自分の国の食料やエネルギーについて考えるべきだと思う。今の老人ばかりの政治家にそんなことが考えられるとも思えないが。本当にこの問題を考えると、くらい気持ちになる。誰か、真剣に考えてくれて、何とかしてくれないかなあ、ということしか思い当たらない。 本当にアジアやインド、アフリカの国々が今の先進国並の生活を始めたら地球は持つのだろうか?地球を滅ぼすのは資本主義と消費文化ではないだろうか。今は資本主義が社会主義に勝ったということになっているが、新しい座標軸を考えないと世界はやっていけないのではないかと思う。豊かさを知らなければ、貧しさには気づかない、ということが北のエゴだとは思うが、本当に何十億という人が消費文化に染まってしまったらおしまいだと思う。何か新しい宗教が必要なのかもしれない。 昼飯にそうめんを作ってもらい、ブカシのスーパーマーケットに行く。チリソース、パイナップルジャム、ウーロン茶、ジッポー(ライター)、KENDO(KENZOのまがい物と思われる)のシャツ、AB3のカセットを買う。ジッポーが3千円、シャツは千円、カセットは400円。安かった。帰ってからまたAB8の家の向かいのスーパーでアイスクリーム、唐芥子付きのポテトチップ、豆、かっぱえびせん(うどん状の物を固めたもの)を買う。物価は1/20と聞いていたが、特に食料品は安い。スーパー内のファストフードショップで飲み食いすれば、百円足らずで腹いっぱい食べられそうだ。 AB3を聞きながらこれを書いている。We are oneという曲が何となくこの国の人の気持ちをあらわしているような気がする。(それとSTAY WITH MEという曲だけ英語なのでそれしかわからない)歌詞の一部は以下のようなもの。 We are all people with a past A past rich in variety Where differences blend in harmony A precious past so deep in us The past will always stay with us To guide us through the changes time compels We are one As we share new experience We are one With dreams of sweet glory We are one In facing the future Challanges and promise awaits us というようなもの。 色々な民族が集まって、国を作り、新しい経験を共有し、一つになってこれから挑戦していこう、その向こうには成功が約束されているはずだ、というメッセージソングである。建国途上の国の人々が何とかいい国を作ろうという気持ちと、工場で見たローカルの人々が重なって、何となくジーンと来てしまう。元々メッセージソングは好きだが、単純な僕は簡単に感激してしまう。単純過ぎる、そんないい奴ばかりでもないし(犯罪の増加率もすごいらしい)、日本人から金をだまし取ろうとする奴もいるらしいし、きれい事では生きていけないが、こういうメッセージソングは今の日本からは出てこないような気がする。ラブソングや世を嘆く唄、世の中を皮肉った唄はあるが、これほどストレートなメッセージソングは70年代で無くなってしまったのかもしれない。こういう唄を聞くと音楽はいいなあ、と思わされる。 |
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