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2011.09.27 Tuesday
敵
筒井康隆著 新潮文庫
老人文学。 文体が変わっている。読点がない。 最初は違和感があるが、読み進むうちに慣れてくる。 筒井康隆の小説といえば、「俺」が主人公に決まっていたが、この小説は「儀助」という老人が主人公。 それぞれの章に、「朝食」とか「友人」とか題名が書かれており、8ページ程度の長さで一章が終わる。 昔の筒井康隆を期待してはいけない。 ドタバタもないし、スラップスティックもないし、ブラックユーモアもない。 むしろ、最初は一体何が始まるのか、という感じだ。 読点のない文体が妙に目につく。 そうやって、読ませていくだけの筆力がある。 もう一つ、擬態語・擬音語が漢字で書かれているということである。 雀の声は、「痴痴痴痴痴痴宙宙宙注注注」と表現されている。 なんの効果を狙ったのか。 それでも、慣れるとこれはこれで味わいがある。 カタカナで書くよりも、漢字を選んで書くほうがより意味が伴って面白い。 物語は、儀助老人の身の回りのことを描いて、それで終わる。 途中、「敵」という章があって、不思議な敵が想定される。 パソコン通信の中での話だ。 最初から最後まで、一人暮らしの老人の生活を描いて終わる。 それでいて、なぜか面白い。 不思議な味わいがある。 さすが筒井康隆。 |
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