考えたこと2

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街場の大学論
内田樹著 角川文庫

内田先生は、ついこの3月まで神戸女学院大学の教授だった人。
現役の大学教授が、自分の大学の教授会の様子や教務委員長としてのメッセージ、入試委員長としてのメッセージなどをブログに書いていたのを本にしている。

第一章「ニッポンの教育はどこへ行く」の一番最初に「国民総六歳児」への道という表題がついている。
その中に、こういうことが書いてある。

 日本の教育はどうしてこんなになってしまったのか?私たちはこの「荒廃」にどんなふうに荷担してきたのか?このままの状態が続いてゆけば、十年後に日本社会は「漢字が読めない、四則演算もできない、アルファベットも読めない、学ぶということの意味がわからない、労働するということの意味がわからない」大量の「元・子ども」を抱え込むことになるだろう。それは社会的能力を欠いた彼ら自身にとっても不幸なことであるが、それ以上に、彼らを保護するために莫大な社会的コストを要求される国民全体にとっても不幸なことである。それが弱肉強食の市場原理の要請するところならやむを得ないという「リアリスト」たちもいるだろうが、もう少し長いスパンで考えることはできないのか。
 「学ぶ」ことができない。「学ぶ」ということの意味がわからない子どもたちがいま組織的に作り出されている。家庭でも、学校でも。しかし、それは子どもたち自身の責任ではない。
子どもたちは被害者である。「学ぶ」とはどういうことか、それを誰も彼らに教えてくれなかったのだから。どうやって、彼らを再び「学び」に向けて動機付けることができるのか…という議論をしている以上、「彼らは『自分探し』の結果、社会的階層降下の道を自己決定したのだから、その社会的劣位は彼らの自己責任において引き受けなければならない」という物言いに軽々に同意するわけにはゆかない。子どもたちは「学び」への動機付けを生得的に持っているわけではないからだ。
 彼らを「学び」へ導くのは大人たちの責任である。
 その責任を放棄して、子どもたちに「自分にとって意味があると思うことだけをしなさい」といえば、子どもたちが「学び」に向かうはずがない。
(中略)
 子どもたちに自己決定したことの自己責任を問うわけにはゆかない。子どもたちを自己責任論で切り捨てるよりも、「自分探し」とか「自己決定・自己責任」とかいう有害なイデオロギーを宣布し、いまも宣布し続けている行政やメディアや評論家たちに口をつぐんでもらうことのほうが先だろうと私は思う。
(中略)
 「オレ的に面白いか、面白くないか」と「金になるかならないか」という二つの基準がいまの日本人たちの行動を決定するドミナントなモチベーションになっている。だが、これは「六歳児にもわかるモチベーション」である。
 こういう言葉を口にする人間は(たとえ実年齢が六十歳になっていても)六歳のときから少しも知的に成長していないのである。だが、本人たちはそのことがわからない(知的に六歳だから)。
 学びを忘れた日本人はこうして「国民総六歳児」への道を粛々と歩んでいる。

これを読んで、深く考えこんでしまう。

本当にその通りだと思うからだ。
今の状態が「荒廃」していると思う大人は、いったいどれくらいいるのだろう。

この文章が書かれたのが2006年。
十年後というと2016年。ちょうど半分の五年が経った。

もちろん、危機を喚起するために内田先生は少々デフォルメしていると思うが、それでも、「漢字が読めない、四則演算もできない、アルファベットも読めない、学ぶということの意味がわからない、労働するということの意味がわからない」18歳が着実に増えているのは事実。

そんな事なら、国が潰れるではないかという人もいるだろう。

昔なら潰れたと思う。
しかし、いまは潰れない。

IT化が計算が出来なくても、漢字が読めなくてもなんとかなるようにしてしまった。

ごく少数の人が意思決定をして、残りは考えなくてもいい、という時代。

そういう時代に相まって、いまの「荒廃」が起こっている。

おまけに毎年10万人以上の新卒が進路が決まらずに学校を出ていくという時代。
日本人よりもインド人やアジア人の方が優秀だ、と企業がいう時代。

そういう時代だ。
笑ってはいられない。



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