考えたこと2

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山本周五郎 さぶ
病院で読んだ本の事を書く。
山本周五郎の「さぶ」という小説。

ひとことで言うと、重たい小説だった。
人間の一番醜い部分と、一番きれいな部分を書いて、無理がない。

人は一人で生きているのではない。
一人が生きるためには、多くの人が関わっている。
だから、時には風のにおいがわかるように、気持ちの余裕を持たないといけない。
作者は世の中は悪いことがたくさんあるが、よいこともあり、捨てたものではないという姿勢。

山本周五郎は実家にたくさんの本があり、名前は知っている。
うちの実家の両親、特に母が好きで、全集もある。
たくさんの本を整理したが、あの全集だけは捨てられないと母が言っていた。

20代のころ、一度文庫を買って読みかけたのだが、面白くなかった。
題名も覚えていない。
若すぎたのだろう。
当時は時代物では柴田錬三郎や司馬遼太郎、池波正太郎などを読んでいた。
柴錬や池波はやはりエンターテインメントだ。
小説の醍醐味を教えてくれた。
しかし、もう一段深い味わいがこの小説にはある。

どちらも、すばらしい。
ただ、種類が違うだけだ。

さぶという、純粋さをそのまま表したような、世に言う愚鈍な、だまされやすい人間と、もう一人栄治という少しひねくれた、ぶっきらぼうな江戸の職人でタフな人間を対置して小説は進む。

小説のほとんどは栄治の人生を書いている。、
自分がこういう境遇になったら、栄治まではいかなくても、同じようなことを考え、実行するだろうという気持ちになる。
しかし、そこで紆余曲折を経て、栄治は止揚する。
全てを飲み込んで、そしてより高い精神的な地点に上がるのだ。
ここがひとつの見せ場だろう。

二人の女性が登場するが、彼女らの役割も大きい。

そして、最初と最後はさぶ。
さぶの純粋さ、一途さが胸を打つ。

重たい小説だが、読後はさわやかだ。

山本周五郎という人は、全ての賞を固辞したらしい。
多くの著作を残しているが、ぼくが読んだのは、この本が一冊目。
名作といわれる一冊から入った。

若い人はなかなか読めないのではないか。
自分がそうだったから言うわけではないが、20代では難しい。
やっぱり、中年になってから、面白さがわかる。

この小説が、作者の晩年の作だからそうなのかもしれないが…。

しかし、名作である。

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