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2008.03.23 Sunday
希望
ボブ・グリーンの「アメリカン・タイム」というコラム集から、「新聞記者の仕事」という記事を紹介する。
これは、オハイオ州立大フットボール部の元コーチが亡くなったときの墓碑銘のおはなし。 そのコーチは、時々暴力行為におよび、相手チームの選手をなぐってクビになったという経歴の持ち主で、世間は彼のことを誤解している…という記事だった。 本当は彼は親切で思いやりがあって、考え深い人物だったというのが、グリーンの書きたかったことだった。 グリーンは元コーチが病気になる直前、一緒に夕食をして、話を聞いた。 かれは「勝つということ」について、尋ねたのだ。 元コーチは言う。 「要するに、勝つことと同じくらい重要なことが何かあるんじゃないか、と君は訊いているわけだ。で、わたしも答えはイエスだと思うよ。勝つことよりももっと大事な何事かがあるんだ。」 それは何か、とグリーンが訊くと、 「偉大な伝道者の言葉があるんだけどね」と彼はいった。「父がいつも引用していたものさ。私が朗読するより、父のほうがずっとうまかったな。”死の訪れる夜にしてなお、希望は星を眺め、ささやかれる愛の言葉は翼のはばたきを聞く”」 「わかるだろ」と彼はいった。 「大事なことは、つねに勝つことじゃない。大事なことは、つねに希望を持つということなのさ。」 その記事を見て、元コーチの家族は引用された詩を、墓碑に刻んだ…という話だった。 最後にグリーンは書く。 新聞記者をしていると、腹が立ったり、シニカルになったりするようなことがたくさん起こるものだ。が、時として、すばらしい何事か−他のことすべてが報われるような何事かも起こるのである。 いい話だった。 「つねに勝つこと」と「つねに希望を持つこと」というのは意外な組み合わせではないか…。 アメリカの大学のフットボールコーチというのは、すごいプレッシャーの中で「勝たねばならない」仕事だったはず。 本当に厳しいコーチだったと思うが、その彼が詩を引用して「希望」こそが大事だという。 週末に3冊読んだが、ほんと、文庫を復活させるべきだと思う。 |
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