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2007.08.22 Wednesday
縁の下の力持ち
以前、図面の管理の仕事をしていた。
図面というのは、設計部署にとっては構成材料と並んで重要なものだ。 設計のコアと言っていい。 図面を作る仕事は、モノのカタチを決めるのだから、すごく大事な仕事である。 カタチを決めるために打ち合わせをし、いろんな部署と調整をして、何人もの承認を経て完成する。 今までの経験から、こうでなければならないというルールもあるし、ここのカタチはなぜこうなのかという思想も必要になるのだ。 この仕事はすごく大事だ。間違えると、それを使ってモノを作るところで問題が起きる。 だからこそ、時間をかけてギリギリまでチェックをする。 この部分は責任も大きいし、その分だけ注目も高い…ヘンな言い方だが、陽のあたる仕事である。 完成してしまうと、あとはそれを使うところに送るという仕事になる。 これを出図という。 出図は地味な仕事である。 その図面を使ってモノを作るところや、価格を見積もるところ、そのモノを取り付けるところなどに図面を送るという仕事である。 たいがい、ギリギリまで設計で検討するから、出図の時間に余裕があることは少ない。 一日、半日、1時間でも早く出さなければならない。 決められた手順にしたがい、決められた量の図面のセットを複数揃え、それを発送する。 もちろん、データーで送るところもあるが、紙でなければ送れないところもある。 時間通りに出して、時間通り着ける。 ただ、それだけである。 うまくいって当たり前。何かでトラブルがあって遅れると、怒られる。 それがどんな理由であれ、時間通りに着くようにしないといけない。 もともとシンプルな仕事だから、やってることは簡単だし、普通にやっていればちゃんとできると思われるのだ。 実際には、日によって図面の数は変わるし、急いでいるから、いつもとは違うような手順でやらないといけないことも発生する。 承認すべき人が出張でいなくて、本当に出図がギリギリになるとか、図面の番号を間違えて取っているとか、一部分だけは古い図面を兼用するとか…いろいろな問題が起こる。 それでも、何があっても予定通りに出図はしないといけないのだ。 設計変更で図面が遅れるのは仕方ないが、出図で遅らすようなことはできない。 うまくやっても、ほめられることはないが、失敗すると大目玉である。 どんなにうまくやっても、それは当たり前なのだ。 本当に縁の下の力持ちという仕事である。 たとえ何かあっても、何事もなかったように、淡々とこなす。 陽があたろうと、あたるまいと、そんなことは関係ない。 だれでもできる仕事だろうと思われようが、気にとめない。 その仕事の存在を忘れられるくらい、当たり前にできて、それが一番いい状態なのだ。 やっている人に、思いがなければいけない。 何年かかかって、その仕事のやり方を変えたのだが、それも何事もなかったように変わった。 そんな仕事に関われて、よかったと思っている。 |
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