考えたこと2

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金沢工業大学
金沢工業大学の評判がいいらしい。
地方の私大は4割が定員割れと言われているが、その中でこの10年で5割も志願者を増やしている。
偏差値も、だいぶ上がったらしい。

ぼくは大学で勤めているときに、視察に行ったことがある。
事務局の仲間で、金沢工業大学がFD(教育改善のこと)を頑張っているということで、熱心な若い人がぜひ見に行こうという事で企画をした。
金沢という事で、日帰りで行けるということもあり、ぼくも手を上げて行かせてもらった。

当時ぼくは図書館の中にいて、パソコン教室の関係の仕事をしていた。
金沢工業大学の図書館には特徴的な仕組みがある、というので興味を持っていたのだ。

まず、サブジェクトライブラリアンという制度。
これは、図書館(ライブラリーセンターと呼んでいる)を利用する上での相談相手。
図書館に来てもどうやって本を探したらいいかわからない人などに、使い方を教えたり、「こういうことを調べるにはどういう本がいいか?」というような相談にのったりする。
通常はリファレンスデスク、というような言い方をする。
実際、図書をいくら揃えても、そういう活動をしないとなかなか本の利用が進まないということが、このレベルの大学では問題になる。
だから、そういう人をちゃんと揃えているのだ。

また、そういう人がいるところが学習支援デスク。
ホームページにライブラリーセンターの説明がある。

「自ら学習を進めたい学生やライブラリーセンターを活用したい学生に向けた相談窓口として、2階に学習支援デスクを設置し、あらかじめ決められた時間に各分野のSL(サブジェクト・ライブラリアン)が待機しています。皆さんが修学していく中で、「どうやって勉強を進めていけばよいのかわからない。」「授業にきちんと出席しているが、重要なポイントがつかめない。」「調べたいことがあるが、どうすれば良いかわからない。」など、学習を進めていく上での相談や参考資料や文献の調査、データベースを利用した情報収集などの相談を受け付けています。」

年配の男性が学生の相談にのっている写真が載っている。
ちゃんとそういう人を配置して、学生を育てているのだ。
館長の言葉がホームページに出ているが、本当にいいことを言っている。
96年から20年以上ライブラリーセンター長を務めている。
図書館長が教員の回り持ちの役職になっていないところが、この大学のエライところだ。
ちゃんとした哲学を持っている。

さらに、ライティングセンターというのもあって、「読む」ことだけでなく、「書く」こともサポートしている。
ここにもちゃんと添削してくれる担当者がいるのだ。

ぼくが大学図書館にいた2005年あたりでは珍しい取り組みだったと思う。
今はそういうアクティブな大学図書館も増えたが、そういう相談員を置いて、学習相談室も持っているところは珍しい。

さらに、24時間365日開いているという、学生が工作ができる夢工房という作業場も見た。
たくさんの学生が何かを作るべく作業をしていた。
さすが工業大学だと思った。
こういう中から、ロボコンで勝つ学生が生まれるんだろう。
もちろん偏差値は低いが、入った学生を鍛え、工学の面白さを教えよう、という気概があった。

同じく、24時間開いている学習室も見たが、そこは学生の自治に任せているということだった。
ガラス張りの建物だった。
どうやって24時間運用しようか、という話もあったようだが、結局は学生に任せて運営するのが一番だ、という結論とのこと。
そうは思っても、なかなかやれる大学はない。
それだけ自校の教育に自信があるんだろう。

また学内で1000人くらいの学生が、インターンとして働いている。
学費の補助の面もあるんだろうが、「仕事」の厳しさも教えるためにやっているのだ。

見学を案内してくれた職員の人が、毎日のようにたくさんの見学者が来られます、と言っていた。
当時ぼくはまだ大学に転職して2年目くらいだったが、大学業界というのはオープンなんだなあ、と思ったものだ。

見学を終えて帰ってからレポートを書いた。
こういうことをやらないといけない、というレポートだ。
色々と見たことを書いて、全員分を合わせて提出した。
それでも、まったく教員からは反応がない。

その後、いろいろあって、大学がなぜオープンなのかがわかった。
情報をオープンにしても、それを真似できるところなどないのだ。
その難しさがわかっているから、自信を持ってオープンにしている。

金沢工業大学は、金沢の地に骨を埋めたいと思っている教員しか採らないという。
そういう熱意を持った教員がいないと、こんな学校はできない。
記事にはいろいろと書いてあるが、金沢工業大学を金沢工業大学たらしめているのは、そういう教員の集まりだと思う。

あれから、十数年たつが、下位の私学が金沢工業大学のようになった、という例は聞かない。
それほど難しいということだ。

だからこそ、金沢工業大学は素晴らしい大学だと思う。

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