考えたこと2

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英語教育の失敗
文部科学省は昨日、新設の大学や学部などの運営状況を調べた2013年度の調査結果を発表した。これは業界ではアフターケアと呼ばれているもの。

定員が集まっていなかったり、設置時の報告書と内容が違っていたりしたら、改善の指示がある。
今回の中身で一つビックリするのがあった。

東京で平成22年に設置した、「私立ヤマザキ学園大学 動物看護学部 動物看護学科」に対しての留意事項だ。

○入学者の状況について、受験者のほとんどが合格していることや、必修科目として配置している「イングリッシュスキルズ(基礎)」については、Be動詞や文の種類(単文から複文)から仮定法までの内容とせざるを得ない状況と推察すると、入学者選抜機能が働いているとは考えられないため、アドミッションポリシーに沿って適切な入試を行うこと。
○「イングリッシュスキルズ(基礎)」については、大学教育にふさわしい水準となるよう内容を修正し、必要に応じ正課教育外での補習教育を整備すること。

これはスゴイ内容だ。
以前話題になった、日本橋学館大学の講義計画(abcの読み方などを教えるというもの ただし選択科目)を意識した文科省の留意事項だろう。

ほぼ受験者全員が合格している状況は、下位の大学では珍しいことではないと思う。
そして、それら入学生に対して「Be動詞や文の種類から仮定法までの内容」を教える必修科目を置いているのは、ある意味良心的でもある。
結局、入学者選抜機能が働いていない、ということだが、そんな入試はたくさんある。
受験生が来たら入試を随時やる、というようなところはみんなそうだろう。

文科省は、この状態を「改善すべき」として、「アドミッションポリシーに沿って適切な入試を行うこと」と留意事項に書いている。
アドミッション・ポリシーというのは、どんな入学者を選抜しようとしているのか、という方針のことだ。
結果的にほとんどの学生が通る、ということなら、アドミッション・ポリシーは必要ない。
だから、「ちゃんと選抜する入試」をやりなさい、ということになる。
しかし、そんな大学が「ちゃんと選抜」しようとすると、「本学を志望した学生には入っていただく」というようなポリシーを持つしかないだろう。
実際、経営上の理由でそういうポリシーを持たざるを得ない私学は多い。

そして、この授業を「大学教育にふさわしい水準となるよう内容を修正し、必要に応じ正課教育外での補習教育を整備すること」となっている。
この授業のような、本来中高でやっているはずの内容は、「正課教育外での補習教育」でやりなさい、ということだ。

しかし、よく考えてほしい。
英語は積み上げの科目だ。
きっとヤマザキ学園大学の英語の教員も、この授業をやりたくてやっているのではないだろう。
入ってくる学生が、それらの知識を持っていないからこそ、必修にして、仕方なくやっている。
Be動詞や仮定法の知識なしに、大学レベル?の英語は読めないに違いない。
だから、基礎を必修で最初にやっているのだろう。それは補習でやれ、ということなら、それと並行して大学レベルの授業をやることが可能だと思っているのだろうか。
中学で一度やっているはずだから、すぐにできるはず、ということなのだろうか。
無責任に大学レベルの授業をやって、出席だけで単位をやっている大学に比べたら、ヤマザキ学園大学は良心的とさえ言えると思う。

たしかに、大学で中学や高校の学び直しみたいな授業をして、単位を与えるのはオカシイというのは正論だ。
それなら、こんな調査結果の留意事項で言うのではなく、正々堂々と行政の力を行使して、大学に指導をすればいいのだ。
補助金を交付しているのだから、大学は監督省庁の言うことを聞かざるを得ない。
それこそが文部科学省の役目というものだ。

しかし、そんなことを堂々と言えない。
それを言ったら、中学や高校の教育のことが問題になる。
だから、こんなところで「留意事項」としてさりげなく言っているのだろう。

日本橋学館大学の学長が、中学の学び直しの英語の講義計画のことで、「バカ田大学」という批判を受けたときに、言っている。

「批判は甘んじて受けますが、なぜ本学がこのような選択科目を用意したのか。それは、中学高校で(基礎教育が)先送りされてきたツケのためです。本学は、学生を社会に送り出す“最後の砦”として責任を果たします。表面だけをとらえてバカにするのは簡単ですが、これが日本の教育の縮図と考えれば、決して笑ってばかりもいられないはずです」

この言葉は重い。



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