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2011.11.12 Saturday
知足安分
山本七平が講演の中で言っていた。
江戸時代、信心深い人というのは、知足安分を基礎に生きている人だということだ。 知足安分は、ちそくあんぶんと読む。 足ることを知って、分に安んじる、という意味。分は分際の分である。 要は高望みをせず、自分の境遇に満足すること。 江戸時代の日本人で信心深い人は、前世、現世、後世の3つを生きるもので、だいたい、この3世を平均するとみんな同じになる、という考え方だったらしい。 現世で金持ちなのは、前世か後世で貧乏だし、現世でお金を取られた人は、きっと前世でお金を取った人で、本来ならこちらから返しに行かないといけないのに、親切にも向こうから取りに来てくれた、という考え方になる。 こういう考え方をしておれば、何に対しても文句が出るはずがない。 年貢をたくさん取ってくれ、という人もいたらしい。 これは、後世で楽ができるように、ということだ。 だから、日本人は非常に諦めがよい。 ちょうど敗戦の時の日本人がこういうふうだった、と山本七平は言う。 良い意味では何かにこだわらず、前向きに生きていけるし、悪い意味では過去のことを反省しない。 なるほど。 そういえば、そんな気がする。 何かがあっても、これは仕方ない、と思う時がある。 意識はしていないが、これは前世の因果か、あるいは後世で取り返せるのか、とにかく現世ではどうにもならない、という感じだ。 そういう強さが日本人にはある。 そういう弱さがある、と言ってもいいかもしれない。 足ることを知って、分に安んじる。 これはキリスト教にもないし、仏教にもない。 日本人は十分に宗教的だろう。 |
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