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2018.02.26 Monday
古き良きイギリス
1980年代にヨーロッパに出張したときのこと。
イギリスとフランスを行ったり来たりした。 当時はタイヤを扱う会社にいたので、車での仕事が多かった。 イギリスでみんなでクルマに乗って移動していた。 ぼくは日本人の駐在員と一緒に乗っていたのだが、その人が言ったことで今でも覚えていることがある。 クルマの中でお腹がすいたので、パンか何かを食べていたら、それを同僚に見られて、あとで注意を受けたということだ。 同僚曰く「車の中でモノを食べるのは下品なことだ」という。 ニュアンスとしては、紳士のやることではない、というような感じ。 ぼくのいた会社は、もとはイギリスでも名門の企業で、それを日本の企業が買ったという状態だったから、日本人駐在員はエライ人だった。 同僚は、社会的な地位を意識させるべく言ったのだろう、とは駐在員の談。 きっと、ジェントルマンは車の中で食事などしない、ということだったのだ。 食事というのは、ちゃんとテーブルでとるものだという意識があったんだろう。 80年代のイギリスには、そういう気風があったんだと思う。 まだ、イギリスの紳士はいつも傘を持っているが、雨が降っても使わない、というような話が日本では言われていたころだ。 4年前夏休みにイギリスに旅行したとき、ガイドの人がロンドンも変わったと言っていた。 移民が増えて、古き良きイギリスが失われたらしい。 ぼくには、新しい車も多くて、昔に比べて景気がいいように思えたが、ずっといる人にとってはそういう変化なのだろう。 80年代のイギリスは、経済的には苦しんでいたと思う。 道には古い車ばかり走っていた。 その苦しさの中でも、ジェントルマンは…というイギリス人がいたということだ。 苦しい中だからこそ、ということかもしれない。 今ごろはもう70歳をはるかに超えているはず。 あれはイギリスの騎士道にまで通じるものだったのだろうか。 何となく、日本の武士道と親近感があって、ぼくは好きだったのだが…。 今ならきっと、車の中でパンを食べるのは、あの頃よりは普通に近づいていると思う。 日本ではコンビニで弁当を買って、昼飯を車の中で食べている人も多くなった。 ロンドンも変わったし、日本も変わったのだろう。 時間は戻らない。 |
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