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2019.06.30 Sunday
ペンギン・ハイウェイ
ペンギン・ハイウェイ 森見登美彦著 角川書店
アマゾンで中古の単行本を買って、今日読み終えた。 こないだ見たアニメの原作だ。 映画を先に見ておいて、よかったのかもしれない。 年をとって、だいぶ想像力が鈍っているから、それを補ってくれたように思う。 かなり忠実に映画化されている。さすがアニメだと思う。 そして、この本の世界をよく表している「絵」だった。 この本は男の本だ。 ぼくは主人公のアオヤマくんが好きだ。 アオヤマくんを好きになれるかどうかで、この物語をわかるかどうかが決まる。 以前、宮部みゆきを読んだ時に、この人は素晴らしいストーリーテラーだと思った。 だいたい、小説というのは女性作家の方が上手だ。 世界最古の長編小説、源氏物語を書いた紫式部も女性だったのだ。 たしかにハードボイルドなどの現実味があふれる小説なら、男の作家もいい。 でも、本当に空想的なストーリーで、ここまで書ける男性作家がいたのは発見だった。 適度に空想科学的なものが出てくる。 空想科学的といっても、ワームホールなどという宇宙科学者たちが真剣に論じているものだ。 作者はそういうものに精通しているのだろう。 それら科学的なものと、ペンギンという生き物をセットしたところにこの本の面白さがある。 そして、不思議な「お姉さん」。 最後まで名前も出てこない。 歯科医の受付という、ごく普通の仕事をしている。 その彼女が持っている不思議な力と、歯科医の受付という仕事をセットしたところにも面白さがある。 でも、この物語の本筋は、主人公のアオヤマくんとお姉さんを含む、彼を取り巻く人達にある。 彼の小学生友だちたち。 家族や海辺のカフェの店長、友だちの家族など、キャラクターとして実在しないような人たちであるにもかかわらず、本を読んでいると存在感がある。 本の帯に「少年には忘れられない夏がある。」と書いてある。 文字通り、そういうことなのだ。 少年の頃の忘れられない夏休み。 子供時代の夏休みの「切なさ」を思い出した。 アオヤマくんやその友だちもいつかは大人になる。 大人になっても、きっと覚えているだろう、そんな思い出。 そういうものを、作者はきっと書きたかったのだろうと思う。 いい物語を読めた。 |
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