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2022.11.25 Friday
人は家畜になっても生きる道を選ぶのか?
人は家畜になっても生きる道を選ぶのか? 森田洋之著 南日本ヘルスリサーチラボ
医師であり、医療ジャーナリストである森田洋之氏が著者。 どの出版社からも出版を断られ、クラウドファンディングで一夜にして目標を達成し、本になった。 一日で読んでしまった。 帯にこう書いてある。 「医療法第1条には、「医師は(中略)国民の健康な生活を確保するものとする。」と書いてある。この2年間のコロナ対策で、経済は落ち込み、学校は休校・リモートになり、高齢者は施設に閉じ込められた。その結果、2020年の自殺者は激増し、子供の自殺は過去最高となった。果たして我々医療従事者は本当に「国民の健康な生活」を確保できたのだろうか?」 この本はいい本だ。 経済学部を出て医学部に行ったという経歴の持ち主だけあって、広い目でコロナ禍を見ている。 ぼくもずっと海外比較で日本は被害が2桁少なく、欧米の真似をしなくてもいいと思っていた。 彼も、同じ意見だった。 日本が世界一の人口あたりの病床保有していて、コロナ患者の死者数も人口あたりで、アメリカの1/10以下。 それでもなぜ医療崩壊するのかというと、コロナに対応しない病床が多いからだ。 他国では医療は公的なものということだが、日本では国立や公立の病院は少なく、民間の病院が多数。 要はどうしても儲け主義になってしまう。 おまけに、病院自体がコロナが怖いとなってしまうと、コロナ病床を断る。 マスコミで「専門家」が煽ったために、患者も怖がってよりつかない。 自称専門家たちの罪は重い。 諸外国では国や公的機関が運営しているので、機動的に動ける。 実際、患者数に応じてダイナミックに増減している。 日本は今回本当に被害が小さかったので、こんなポンコツな医療体制でも死者が少なくて済んだのだろう。 第1章にはこんなことが書いてある。 「自動車の製造を止めれば、交通事故で死ぬ年間100万人の命を救えたはずだ。でも僕らは歴史上決してその選択肢をとらなかった。意識するかしないかにかかわらず、我々はリスクと共存し、それを許容して生きてきたのだ。 それなのに今、コロナによる恐怖と医療従事者による「ゼロリスク」の先導は世界中の経済を止め、生活を破壊し、人々は自らカゴの中に入ろうとしている。そして巨大な権力は近い未来、医療が持つ壮大な力を巧みに利用するだろう。(もしかしたら今がその時かもしれない)得るものに比べて失うものが大きすぎはしないだろうか。バランスが圧倒的に悪過ぎはしないだろうか。その時になって我々は、 「あ〜、あのコロナパニックが始まりだったんだ」 と気づくのかもしれない。 そんな未来を子ども達に残してしまうのか…しかも自分たちがその片棒を担いでいるのか…。漠然とそんなことを思っていたときに聞いたのが、 「人は家畜になっても生き残る道を選ぶのか?」 と言う言葉だったのである。」 お隣の中国では、すでにそうなっているのではないか、とぼくは思う。 マスクの効果に関しても、アメリカのノースダコタ州とサウスダコタ州の比較で説明している。 ノースダコタはマスクを義務化し、経済制裁も強固に実施し、サウスダコタはマスク義務なし、経済制裁もほぼ無し、いわゆるノーガードに近いゆるい感染対策。 その両者の感染者数を比較してみると、ほとんど一緒できれいに同じ曲線を描いている。 今のワールドカップでも、マスクなどしていない。 一体、日本はどうなっているのか。 また、デンマークとスウェーデンの感染者数の比較でも、ロックダウンの効果の検証ができる。 デンマークはロックダウンを厳格にやり、スウェーデンは厳格なロックダウンはしなかった。 当初スウェーデンは感染が拡大したが、デンマークの感染者はあとから激増し、累計の感染者数もスウェーデンを追い抜いてしまった。 つまり、外食の営業を停止しても、関係ないということだ。 森田氏は言う。 「果たして我々日本人は、「社会全体の最適解」をきちんと考えているのだろうか? 感染症の恐怖に引きずられて、自ら殻の中に閉じこもってしまってはいないのだろうか? 子ども達に明るい未来を残すためにも、いまきちんと社会を正常に戻しておく必要があるのではないだろうか。」 コロナ死だけを特別扱いする、ダブルスタンダードについても言及している。 毎年肺炎で10万人以上死んでいるが、コロナ死は2年で2万人以下。 どちらも感染症であり、どちらも主に高齢者。 コロナのみを偏重する専門家・メディア・政治家は「肺炎死を軽視している」ことに気づいていない、という。 ぼくは、普段マスコミに出ることがない感染症の専門家たちが、いちびっているようにさえ見える。 最初によく出てきて、思い切り恐怖を煽っていたおばちゃんや、緊急事態だと勝手に記者会見して、何もしなければ40万人死ぬなどと言った学者などは戦犯だと思う。 第5章に書いてある「日本の医療の構造的欠陥」は、著者が経済学部の大学院で授業をした記録。 これを読めば、いかに日本の医療が無駄を生み出しているか、よくわかる。 そういえば、2014年に「「病院」がトヨタを超える日」という本の記事を書いたのを思い出した。 あの本にも「日本の病院は7割が赤字であること、現在の医療は”装置産業”であって、資金調達が必要なこと、実際儲かっているのは設備投資をしない病院や、診療報酬点数の高い医療を優先する病院であって、患者のことを考えていない病院であること」と書いてあった。 こういう病院が今はコロナバブルで儲けているのかもしれない。 今まで豊かだったから、こういうムダが通ってきたのだろう。 でも、今からは人口が減り、どんどん貧しくなる。 次の世代がちゃんと暮らしていけるように、ぼくらは繋いでいかないといけない。 でも、そんなことを考えている政治家やマスコミは見えない。 それが根本的な問題なのだろう。 |
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