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2010.09.10 Friday
海鳴りと蝉しぐれ
今日も本の話。
入院の事を言うと、せっかくだから、この本を読めと言われた。 それが藤沢修平の本。 「海鳴り」と「蝉しぐれ」の2冊。 どちらが藤沢修平の名作か?ということでもめて、その2冊が残ったらしい。 結局2対1で「蝉しぐれ」が勝ったらしいが、一度読むことを勧められた。 藤沢修平は読んだことがなく、初めて読んだ。 なかなか味がある時代小説だった。 まず、男性の小説だというのが第一の印象。 女性も読んで楽しめると思うが、これは藤沢修平が男性であり、その視点で書いているから仕方がない。 「海鳴り」は初老の男性。 老いを感じ始めるころの男性が主人公。 この気持ち、すごくわかる。 初めて白髪が混じり始めた髪の毛を見つけたときの話で、物語りは始まる。 人生の下り坂に入って、少しいったころ。 自分で自分の限界を知ったころ。 だいたいの自分の人生が見えるころ。 そんな時代の男性の気持ちがよく出ている。 結末は書かないが、上下2冊、一気に読ませる。 ああ、そういうことを思うんだよなあ、と思う。 誰しもが、この主人公のように、波乱にとんだ人生のドラマを迎えられるわけではないが、そう望む気持ちは誰にでもあるだろう。 「蝉しぐれ」は若い男性が主人公。 こちらのほうが、夢と希望がある。 しかし、藤沢修平らしい諦観があるのも事実。 この人が描く人生は二つとも、あきらめという気持ちが流れている。 その流れに逆らって、あがいてみるが、所詮ただのあがき。 流れに逆らうことはできない。 「蝉しぐれ」は若さが心地よい。 十分に波乱にとんだストーリー。 殺陣の場面もすばらしい。 この人が書く女性は、彼の理想なのだろう。 ヒロインは同じような女性だ。 さて、どちらが名作か? 一冊を選べといわれると、難しい。 年を取ったから、「海鳴り」のよさはわかる。 しかし、小説はストーリーを楽しむものだ。 そういう意味では、「蝉しぐれ」だろう。 しかし、難しい。 やっぱり「蝉しぐれ」かな…。 |
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