2016.12.31 Saturday
Gの世界、Lの世界
年末となると、恒例の忘年会。
同級生と会って旧交を温めた。
この年になると、いろいろある。
知人が退職をして、仕事をまた始めたという。
ある公的機関の事務所の仕事だが、ビックリするような事が多かった由。
これだけコンピューターが普及しているのに、まだ手書きの台帳を使っていて、それ故何かを一斉に変えるとなると時間がかかるのだ。
台帳の空いている列のところに、同じ事を延々と書く仕事をノート数冊分、やったらしい。
エクセルであれば、列を追加したり、一斉に何かを書き込んだりがすぐできる。
ぼくが会社で最後にやった図面の仕事など、コンピューターがあったから10万件弱のデーターの整理が2人でできた。
あれが、十数年前。
まだ、手書きの台帳を使っているのか、とビックリ。
また、最初に会社時代のように張り切って仕事をし過ぎた(別に会社時代のように普通にやったとのことだが)ため、2人の職員から仕事をもらう羽目になった。
その2人の仕事は重複しているところもあり、合理化することができる。
それを提案すると文句を言われたとのこと。
「これはこのやり方で」という感じだったらしい。
彼にとっては、仕事を合理的にやって、効率を上げることこそが仕事の一部だったが、その公的機関の事務所にはそういうDNAはなかったということだ。
あげくの果てには、ホチキスで同じ内容のメモをとめていく、という仕事もやったとのこと。
当然、メモを確認したら外すわけで、それならポストイットを使うとか、外す時間がもったいない、と思うものだ。
しかし、そんなことはおかまいなしだったらしい。
どういうわけか、外したホチキスの針がいっぱい入った箱も置いてあったとのこと。
何につかうのかはわからなかったらしい。
その上、表題のついたCD-ROMのいっぱい入った箱を上げたり下げたりの重労働。
その箱の中のもの順番に並べ替えて元に戻すという。
「何の順に並べ替えたらいいのか」と聞くと、「いろは順」だという。
普通はアルファベット順かあいうえお順だが、まだ「いろは」がここでは現役だった。
「いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせす」という「いろは歌」。
ぼくは小学校の頃習字を習っていたので、今でも暗記しているが、その順番に並べろと言われると難しい。
案の定、いろは歌を紙に書いたものを貼って、それを見ながらCDを並べ替えたとのこと。
いろは順に並べる必然性は全くわからなかったらしい。
そのあたりから、腰が痛くなり始め、先週歩けなくなり、ついに辞めるに至ったとのことだった。
民間企業と公的機関は仕事のやり方が天と地ほど違う。
それは大学でも同じようなもの(さすがに私立大学はちょっとはマシだと思うが)。
ぼくも十数年前にその洗礼を浴びた。
とても荒っぽい分け方だが、今の日本には、G(Global)の世界とL(Local)の世界がある。
産業再生機構などを手がけた冨山和彦氏も言っている。
ぼくは民間企業で25年間働き、その後学校法人で10年間働いて、それは強く思った。
最初に勤めたところはGの世界。後で勤めたところはLの世界だった。
Gの世界は海外の企業や同業他社などと張り合って開発や効率化を図っている世界。
一般的にビジョン、戦略や計画などが重要視され、常に危機感を持って仕事をする。
Lの世界は競争相手を意識せず、その組織の中の事情だけを考えている世界。
一般的に、順番、根回しや前例などが重要視され、常に組織の内部事情を考えて仕事をする。
Gの世界は主に民間の企業で、特に世界と伍して仕事をしている人たちで、Lの世界は公務員や学校法人など税金を使って仕事をしている人たち。
みんながみんなとは言わない。
しかし、大きく分けて、そういう違いがあると思う。
同級生はGの世界の仕事のやり方を、Lの世界に持ち込んで、不適応になってしまったということだろう。
Gの世界で勤めていた人も、定年後の仕事などはLの世界になることが多い。
そこで初めてLの世界を知ると、こういうことが起こる。
政府は働き方改革で、同一労働同一賃金と言っているが、ぼくの経験した2つの法人では正規社員、非正規社員の差はLの世界で大きかった。
下手をすると、非正規社員の方が大事な仕事をしていて、給料が安かったりする。
同級生もきっとそれを強く思ったはずだ。
こういう不条理をなくさないと、日本は良くならないと思う。
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