考えたこと2

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ダンヒルのライター
亡くなった父はわりとヘビースモーカーだった。
ずっとハイライトだったが、途中でセブンスターに変わった。
定年を過ぎて心筋梗塞になって、バイパス手術をした。
それで長いこと吸っていたタバコをやめた。

昭和50年代、日本も豊かになってきて、喫煙者は自分のライターを持っていた。
もちろん、100円の使い捨てライターも出てきていたが、自分のライターを持っているのがステイタスだったような感じだ。
当時の中年サラリーマンは、半分くらいは使い捨てでないライターを持っていたと思う。

女性のバッグやアクセサリーと同じく、ブランド物のライターもあった。
Zippoなどのオイルライターはアメリカのもので安価だったが、ヨーロッパのダンヒルなどはガスの充填式で高かった。
今見ても、6万円くらいする。
男のおしゃれ、という感じだった。
昭和の時代、ライターだけでなく、万年筆、スーツ、ネクタイ、腕時計など、男性のおしゃれアイテムがあった。
もちろん今もあるだろうが、長らく続いた不景気で、そんなものもだいぶ減っただろう。

ライターについては、職場が禁煙になり、タバコを吸わない人も増えた。
タバコの値段も上がって、今や吸っているのは中年以降の人ばかりではないか。
その人たちも、使い捨ての100円ライターがほとんどだ。

ぼくは8年前にタバコはやめたが十数年前に父が亡くなった時、ずっと実家に置いてあったダンヒルのライターをもらってきた。
父も煙草をやめてから使っていなかったし、ぼくも使わなかったので、気になってはいたが埃にまみれ、サビでくすんでいた。
それを今日思い立って、ピカールという仏具を磨く薬品で磨き、石とガスを買ってきてもう一度火をつけてみることにした。

外観はそこそこキレイになったが、ガスを入れ、火をつけてみるとガス漏れしてすぐに使えなくなる。
綿棒でエチルアルコールを使って掃除し、爪楊枝で汚れを落とし、だいぶ苦労したがようやくまともに火がつくようになった。
まだまだガスがすぐになくなって使えなくなるが、パチンと蓋を開け、シュッとローラーを回し、ボッと火がつく一連の動きはまことに美しい。
最後に蓋をパチンと閉じる時のバネの強度も全く衰えていない。
重さといい、持った感じといい、いいものは手に馴染む。
さすが6万円のライターだ。

さて、だからといって、どうなるものでもない。
タバコはやめたから、ライターを持ち歩くわけでもない。

それでも復活したライターを見ると、何となく懐かしい。

あの時代、今より不便で貧しかったが、心は豊かだったような気がするなあ。

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