考えたこと2

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教育政策
こないだ、効率のことを書いたが、教育にも効率が必要だ、ということを言っている人がいる。
慶応大学の中室牧子准教授という人。教育経済学者だ。
TEDxKeioという、慶応版のTEDでプレゼンしている。

世界に目を向けると、教育も経済学の一つであり、教育といえども効率を科学的に証明してやっていく、というのが流れらしい。
中室先生はネルソン・マンデラの言葉を引く。

「教育とは、この世界を変えるためのもっとも強力な武器である」

これは真実だとぼくも思う。
若い人にタバコを吸わない人が増えているのは、禁煙教育の成果だと思う。
戦後の民主主義教育は、ぼくらに民主主義は当たり前のことだと教えたし、ぼくらはそう思っている。

しかし、そのためにはもっと教育の効率を上げないといけない、ということだろう。

教育の効率といって、誰もが思いつくのはテストの点数だろう。
テストをやって、生徒の点数の伸び代を測れば、教育の効率がわかる。
アメリカでは、実際にやられているとのこと。
学校だけでなく、教師一人ひとりまで、どれだけ生徒の点数を上げたかという「教育の付加価値」がわかるようになっているらしい。
それを一般に公開している。

さぞかし、学校や教師からは評判が悪かったことだろう。
日本ではそういう動きさえない。
文科省のやった共通テストの点数を学校別に出すことすら、抵抗がある。
この差は大きい。

もちろん、先生の言い分もあるだろう。
家庭が悪ければ、いくら教えても復習や予習ができないし、それを十把一からげで比較されても困る、というような意見が出る。
アメリカのドラマを見ていると、中学や高校の先生が「給料が安いのに…」、という場面がよくある。
安い割には、そういう格付けをされ、大変なのだ。

でも、そういう意見を抑えこんで、2001年にアメリカ連邦議会は「No Child Left Behind Act(落ちこぼれ防止法)」を作り、教育の科学的な根拠が重視されるようになった、というのが経緯らしい。

その一つがテネシー州で行われた「スター・プロジェクト」というもの。
少人数のクラスの方が、通常クラスの生徒よりも良い成績をおさめた、という結果だ。
実際に11600人の生徒に対して、「ランダム化比較試験」をやったとのこと。
その結果をもって、初めて予算がおりる。

それらの事実を見てきた中室先生にとって、日本の教育は遅れているという。
先生は言う。

「まず、教育関連のデータへのアクセスは、この国ではきわめて限られています。国にしろ、地方自治体にしろ、学区にしろ。次に──こちらのほうがより深刻な問題ですが──もっとも正確で説得力のある根拠を提供してくれる方法である、スター・プロジェクトのような社会実験が、社会的に受け入れられていないのです。
おそらく倫理的な懸念があるためでしょう。しかしより本質的なところで、人々は、評価されることを嫌うのです。私も個人的には、その感情は理解できます。
しかし、日本はもはや裕福な国ではありません。限られた資源と制約の多い予算の中で、私は今こそ、教育について考えるべき時、根拠に基づいた教育政策決定に切り替えるべき時だと強く信じています。」

日本はもはや裕福な国ではない、ということだ。
特に、若い人たちに割ける予算が少ない。
途方も無い社会保障のツケを背負っている。
この国の負債は年間の予算の10年分にもなる。
だから、教育も効率を上げないといけない。

でも、ぼくらが小学校のころも、日本は貧しかった。
高度成長の前だ。
今、ノーベル賞をもらっている人たちの世代はそれより前だから、もっと貧しかった。
それでも、そういう人たちを輩出したし、高度成長を実際に成し遂げた人たちの子供の頃はもっと貧しかっただろう。

中室先生の言っていることは正しいのだと思う。

でも、本当にそうだろうかと過去の時代を見て思うのも事実。
末は博士か大臣か、という言葉があって、本当に博士や大臣になるのが素晴らしいことだった時代。
テレビにはかしこい人が出ていた時代。
どちらかというと、拝金主義が疎んじられた時代。

そういうのを考え合わせると、時代の雰囲気みたいなものが、教育にも影響していると思わざるを得ない。

それは何なのか、解明してほしいと思う。


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