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2008.06.15 Sunday
黒笑小説
黒笑小説 東野圭吾 集英社文庫
怪笑小説、毒笑小説に続く東野圭吾のブラックユーモアの短編小説集の3冊目。 長いブランクだった。(推理小説はたくさん書いているが) この人、自分でも筒井康隆の短編を意識しているのだろう。 筒井が書いた文壇のパロディ小説である、「大いなる助走」と同じテーマで書いている短編を「もうひとつの助走」という題名にしている。 文学賞をなかなか取れない作家と、それを取り巻く編集者たちの思いを皮肉たっぷりに書いている。 13の短編のうち、4つほどが文壇や編集者をテーマしたもの。 さもありなん…という内容で、いずれも、虚勢をはる作家と職業柄しかたなくつき合っている編集者のぼやきや、作家を商品として冷たく見ている出版社の内実が、皮肉たっぷりに書かれている。 東野圭吾が実際にそんなふうに扱われたとは思わないが、作家という商売、何が売れるのかワカラナイ…という綱渡りのような世界を歩んでいるということがよくわかる。 売っているのは、作家の力量なのか、それとも出版社の方針なのか…。 作家から見ると、たしかにそういう側面もあるのだろう。 「いい小説」と「売れる小説」は違うだろうし、文学賞の選考作家たちの思惑と、出版社の見方は違うのかもしれない。 今や、小説よりもコミックの方がドラマ化されるケースが多いのだから、時代も変わったものだ。 文壇をテーマにしたもの以外にも面白いものが揃っている。 ぼくは、やっぱり若いころに読んだ筒井康隆の短編の方が好きだが、眠れぬ夜を過ごすためにはもってこいの短編集。 笑えるところは少ないが、にんまりできる。 |
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