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2005.06.05 Sunday
70年代と今 2 ステレオのこと
70年代の音楽の事を書くなら、どうやって音楽を聴いていたか、ということについても書かないといけない。
前回書いたように、音楽といえばレコードだったから、聴くためにはレコードプレーヤーが必要だった。70年代の初めには、今のようなラジカセなどなく、音楽を聴くためにはステレオが必要だった。コンパクトで手軽なものなどなく、レコードプレーヤーとアンプ、チューナー、スピーカーがセットになったものか、各々別々に買うか、いずれかだった。 当時の国内ブランドはソニー、テクニクス、ダイヤトーン(三菱)、ローディ(日立)、オプトニカ(シャープ)、オットー(三洋)パイオニア、デンオン、トリオ、サンスイ、オンキョーなどなど。 他にもたくさんあったけど、忘れた。 今はもう無いブランドもたくさんある。 それほど、音楽を聴くための装置も変わってしまったということだろう。 ウチはサンスイのアンプとスピーカー、パイオニアのレコードプレーヤーだった。 スピーカーの大きさは幅30センチ、高さ70センチ、奥行き30センチくらいはあったと思う。 あとで、72年か73年にソニーのステレオカセットデッキが我が家に来た。 今の小さなCDラジカセの倍くらいの大きさで、単にカセットに録音できるだけ(スピーカーも付いてない)というものだったが、画期的だった。それでも、レコードに比べると、音質は明らかに悪かったけど。 とにかく、レコードを聴くためには、お手軽ではない装置が必要だった。 音楽をお手軽に聴くためには、もっぱらラジオを聴いた。 深夜放送が多かった。当然AM放送。洋楽と邦楽が半々だった。英語などわからなくても、みんな洋楽を聴いていた。 FM大阪が今年開局35周年だから、開局したのが1970年。当時はFMラジオというものが出始めだった。ラジオのカタログに、FMステレオ放送とは?というような事が書いてあったっけ。 あれから35年経って、放送局が3つほど増えただけというのは寂しい。 月刊STEREOという雑誌を時々買った。今のパソコンの雑誌と同じく、ほとんど広告だった。広告を見るのが楽しかった。 雑誌売り場にはステレオ関係の雑誌があふれていた時期だった。 中学、高校の頃は、三宮の星電社に行っては、ステレオ関係のカタログを集めた。ただで、かなり読むところがあって、すごく楽しめたものだ。 70年代の神戸で、電化製品といえば、三宮の星電社だった。(少なくとも我が家では) ・・・というような思い出話にすぐ走ってしまう。 要は、レコードを聴くという事は、今よりはたいそうな事だったということだ。 その当時の「ステレオ」という言葉には、カリスマ性があったと思う。 値段も高かったし(もちろん、中学生が買えるような代物ではない)、親が興味がなければ、説得して買ってもらうのは困難だったろうと思う。 ウチの場合は、親父が会社の同僚か誰かに言われて、あった方がいい、というような事になり、僕がカタログを集めた、というラッキーなケースだった。(ウチの親父は機械オンチだったが) ハイファイ、という言葉にすごいあこがれがあった。 ハイファイというのは、ハイ・フィデリティの略で、高忠実度、ということ。レコードが録音された状態を忠実に再生する、という意味である。 スピーカーも一つの箱に、高音用と低音用の2つ付いているものや、さらに中音用と分けて3つ付いているものなど、色々と出ていた。おまけに、それぞれのスピーカーを別々のアンプで駆動する、というようなものまで登場した。 (そのころに、やっとラジカセが登場したと思う。70年代の中頃か・・) 「ステレオ」にはそういう意味で、メカに対する夢があった。 単に音楽を聴ければいい、というものではなく、どのメーカーの、どんな技術の、どんなデザインか・・というような思い入れがあり、それが「音楽」につながっていたと思う。 (個人的にそうだ、ということだけではなく、70年代初めの頃は、多くの人たちがそうだったと思う。) 音楽を聴く、という行為にはこのような背景がぶらさがっていたのだ。 レコードをジャケットから取り出し、慎重にレコードプレーヤーに載せ、ターンテーブルが回りだし、ゆっくりとレコード針をのせる・・・という一種の儀式は、「ステレオ」という装置への思い入れと、今から聴く音楽への期待で、ある種の緊張を伴った行為だった。 これだけの儀式をしてレコードを聴いても、たった片面20分程度で必ず終わり、連続で1時間も2時間も聴けるようなものではなかった。曲の順番を変えて聴くなどできないし、気に入らないから曲をとばす、というような事も面倒なことだった。 それでも、自分のレコードを聴くという瞬間は、やはり、所有する喜び、というものにつながっており、70年代の音楽は、やはり所有されるモノだった。 所有するモノ・・・今はどうなのか? |
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