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2017.02.09 Thursday
大学入試改革の目的
今、文科省で大学入試改革をやっている。
大学入試改革の真の目的は、入試を変えることで小中高の教育を変えるためだ。 それ以上でも以下でもないと思う。 まだ日本の社会では大学入試に通ってどんな大学を出たかということが、大学での成績よりも、その人の属性を決める大きなシグナルになっている。 だから、入試がゴールとみなされる。 それを目指して頑張るのだから、入試改革は大事になる。 改革はあくまで国立大学とセンター試験が対象だ。 国立大でもAO入試が多用されるようになるということだ。 AO入試は何度か書いたが、いい試験方法だと思う。 ただし、そこにマンパワーを投入し、本気でやるならということだ。 現在、偏差値が低い私学でやられているのは、早期に志願者を獲得するためであって、それとはまったく違う。 高等学校基礎学力テストというのが導入されるのは画期的だが、それをどう使うかがわからない。 趣旨から言って、高校生が全員受けるべきだと思う。 そこで、学力を担保すれば、あとは大学が自由にやったらいいのだ。 しかし、そもそも私立大学では半分以上の学生が一般入試を受けないところがほとんど。 それは何ら改革されない。 推薦入試の比率を減らすとか、AO入試でも学力テストを必須とするとか、試験の回数を減らすとか、そういう改革はやらない。 その結果、定員割れを恐れる大学が、どんどん入試を増やし、入試が多様化した。 何の意味で多様化かというと、大学に多様な学生を入れるとか言っているが、結局はわけの分からない多様化だ。 それはそうだろう。真の目的は単に志願者を集めることだからだ。 私立大学だって、多様な人材がほしいからと言って、その多様性が学力のバラツキになったら困るはずだ。 大学でのカリキュラムが理解できる学生と、まったく理解できない学生が同居していたら、教える方は大変だ。 そのために、入試をやる。それが入試の意味だ。 もちろん、入ってからのやる気でカバー出来る範囲はあるだろう。 しかし、授業で使う言葉がわからない学生がたくさんいれば、授業自体が成り立たない。 ぼくは入学直後の学生に、熟語の知識のテストを提案し、実際にやったことがある。 それを先生に見せて、どういうレベルの学生が来ているかをわかってもらい、授業のレベルを逆に学生に合わせてもらおうと思ったからだ。 何度かそのことは書いたが…。 そもそも入試というのは、その学校で学ぶために必要な学力を試すものであって、そこを通ったらその大学で授業を受けられるように設計されているべきものだ。 入ってから英語の実力テストをやっている学校はマジメに教えようとしているのは事実だが、入試についてはマジメにやっていない。 というか、やったら入る学生が少なくなるんだろう。 大学入試が多様化したおかげで、高校では進路指導ができないという先生が増えた。 普通は進路指導というのは、生徒の得意分野を見極め、生徒自身の希望を聞き、一緒になってどの道に進めばいいのかを考える、ということだと思う。 リクルートが全国の高校の進路指導主事を対象に行った「高校の進路指導・キャリア教育に関する調査」の結果を引用する。 「■91.9%の教員が、進路指導を「難しい」と感じている。前回調査(2014年)から引き続き高止まり。 ■困難の要因(上位3項目)は「入試の多様化」がトップ(前回4位から上昇) ・難しさを感じる要因は、前回調査4位の「入試の多様化」(25.7%)がトップ。 ・前回調査1位の「進路選択・決定能力の不足」は3位、2012年調査1位の「家計面について」は5位。景況感については回復の兆しを感じさせる結果である一方で、入試制度の多様化が進路指導に影響を与えている。 ■大学・短期大学などに期待することは、「入試の種類の抑制」「わかりやすい学部・学科名称」で変わらず、「実際の講義・研究に触れる機会」が増加。 ・大学・短期大学などに期待することについては、1位が「入試の種類の抑制」(39.3%)、2位には「わかりやすい学部・学科名称」(36.6%)が入り、入試制度や学部・学科の種類が増加・複雑化している現状が進路指導にも影響していることが明らかとなった。」 今や入試の回数が増え、生徒の選択肢が増えた結果、進路指導の教員ですら「難しい」と感じている。 確かに、多くの私大では、なぜ何回も入試をするのか、明確でない。 志願者数増以外の理由が見当たらないのだ。 まして、推薦やAO入試については、明確に「入りやすい」入試になっている。 世間でFランク大と呼ばれているような学校では、よほどのことがない限り、受ければ通るという状態だ。 推薦と言っても、専願か併願か、学校推薦か指定校推薦か自己推薦かなど、これも種類が多い。 1つの大学を受けるだけでも、どれで受けるのがいいのか、そんなものはわからない。 その結果、Fランク大ですら一般入試組と推薦・AO入試組で二極化が起こっている。 大学は二極化が問題だと言っているが、そんなものは入試の結果で当たり前なのだと思う。 文科省もどうしてそこにメスを入れないのか。 私学に対しても助成しているのだから、指導はできるはず。 高校で困っているのは、どちらかというと下位の生徒だと思う。 そこを底上げしないと、これからの世の中を生きていけない生徒が増える。 入試改革は、まず私大の多すぎる入試をなんとかしないと…。 |
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